米ライドシェア(配車サービス)大手、リフトとウーバーテクノロジーズが相次いで上場した。ライドシェアは、米国で広く普及し始めている。スマホでアプリを登録すると、現在いる場所で配車サービスを利用できる。
両社とも、未上場ながら想定時価総額が10億ドル(約1100億円)を超える“ユニコーン企業”の代表格だった。
そのリフトに、楽天は11%出資している。一方、ウーバーには「10兆円ファンド」のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が16%出資している。楽天とソフトバンクグループ、投資効果はどちらに軍配が上がったのか。
リフトの時価総額は2.4兆円
リフトは3月29日、米ナスダック証券取引所に上場した。初値は87.24ドルで公募売り出し価格(公開価格)の72ドルを21%上回った。終値は公開価格を9%上回る78.29ドルだった。
取引初日の終値で計算した時価総額は約220億ドル(2.4兆円)。短文投稿サイトのツイッター(252億ドル)に迫る企業規模となった。
リフトの筆頭株主は楽天。上場申請書類による保有比率は13%だったが、ブルームバーグのデータによると、上場時は11.5%。楽天は2015年に3億ドル出資し、その後も持ち分を増やしてきた。楽天の三木谷浩史会長兼社長はリフトの取締役の1人だ。楽天の保有株の価値は約25億ドル(2700億円)となった。
楽天は携帯電話事業の投資資金を確保するため、上場後に保有するリフト株の一部を売却するとみられていた。
リフトが「好発進」したことから、楽天は19年1~3月期にリフト株の評価益として約1100億円を計上した。
楽天の19年1~3月期の連結決算(国際会計基準)の売上高にあたる売上収益は前年同期比16%増の2802億円、純利益は同6倍の1049億円と過去最高。リフトの評価益を計上したことが業績を押し上げた。
しかし、主力の国内電子商取引(EC)の営業利益は17%減の138億円。米アマゾン・ドット・コムなどとの競争が激しく、物流網の整備費用が膨らんだ。本業の低収益を投資で補った格好だった。
リフトの上場後初の決算となる19年1~3月期の純損益は11億ドルの赤字となり、18年通期の純損失9億ドルを上回る大幅な赤字となった。市場拡大を追い風に急成長が続いているが、広告費や研究開発費が収益を圧迫している。
リフトの株価は上場2日で公開価格割れとなり、その後も下落を続けた。楽天は7月1日、「19年4~6月期にリフト株の284億円の株式評価損を計上する」と発表した。楽天は「リフトの筆頭株主で、三木谷会長兼社長がリフトの取締役に任命され経営に重要な影響力を行使できるようになった」として、4月9日付で持ち分法適用会社にした。今後はリフトの業績に応じて持ち分法投資損益を計上する。
これまではリフト株を金融商品として扱い、四半期ごとにリフト株を時価評価し1~3月期に1100億円の株式評価益を計上した。4~6月期に関しては「4月1日から8日までのリフト株の株価変動を反映した評価損284億円を計上する」という。これ以降は持ち分法投資損益の計上となる。