松下電器の場合は、少しでも被害を軽減させるために多大な努力を費やし、それが消費者にも伝わりました。結果、松下ブランドはそのパワーを維持することができました。
一方、雪印乳業の場合は、ブランド能力への信頼だけでなく、ブランド意図への信頼も揺るがせるような事態を自ら引き起こしてしまいました。結果として、企業の社会的存在そのものがダメージを受けてしまったのです。私たちは過去の事件に学ぶことでブランドへの信頼についてより理解を深めることができるはずです。
(文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授)
【引用文献】
・McEvily, B., Weber, R.A., Bicchieri, C., & Ho, V.T. (2006). Can groups be trusted? An experimental study of trust in collective entities. In: (R.Bachman & A.Zaheer eds.) Handbook of Trust Research(pp.52-67). Chaltenham, UK: Edward Elgar.
・Silent Trade, Encyclopedia Britannica
http://global.britannica.com/topic/silent-trade
・飯田隆(1986)「科学の方法」日本大学オンライン
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/philosophy/faculty/iida/MethodOfScience.pdf
・神戸大学(2009)「戦略的品質管理リーダー育成プログラム ケース 『松下電器(現Panasonic)製FF式石油暖房機事故とその対応』」
http://mba.kobe-u.ac.jp/life/syllabus/2009/kato/week4-1.pdf
・駒場恵子(2006)「メディア対応の巧拙が企業の評価を決める」
http://www.ntt-ad.co.jp/publication/column1_02.html
・下垣有弘 (2008)「コーポレート・コミュニケーションによるレピュテーションの構築とその限界:松下電器産業の事例から」神戸大学ビジネススクール Current Management Issues.
・「独VWのブランド価値、1兆2000億円毀損 英社調べ」(9月25日付日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM25H2V_V20C15A9FF2000/
独立行政法人製品評価技術基盤機構 (2006)「松下電器産業株式会社製FF式石油温風暖房機事故の原因究明について」
山岸俊男(1998)『信頼の構造:こころと社会の進化ゲーム』東京大学出版会