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小笠原泰「日本は大丈夫か?」

日産、“死に体”に…ルノー&経産省のダブル支配で経営機能不全

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 しかし、ことはうまく運ばない。ゴーン氏を追放し、日産の業績は西川体制の下で改善の方向に向かうはずが、直近の2019年第1四半期(4~6月)決算は、売上高が前年同期比12.7%減の2兆3724億円、営業利益に至っては同99%減の16億円と赤字寸前(ルノーの同期営業利益は14%減)。これに加えて、業績改善に向け2022年度までにグループ全従業員の約1割に当たる1万2500人のリストラを行うというオマケつきである。

 ゴーン氏時代の負の清算と世界的な事業環境の逆風もあり、相応の業績悪化は想定されていたが、西川社長も認めているように、想定を大きく下回った。大規模なリストラも想定外であろう。果たして、ゴーン氏がそのままとどまっていても、同じ結果になっただろうか。筆者は、違った結果になっていたと考える。ゴーン氏の腹心だった外国人幹部を矢継ぎ早に追放した西川社長は、恐らくルノーを含めた複雑なグローバルなオペレーションを理解できていなかったのではないか。

 そして、荒波の予兆は決算発表の前にも表れていた。ゴーン氏とともに逮捕されたグレッグ・ケリー前代表取締役が、6月に発売された月刊誌「文藝春秋」(文藝春秋)のインタビュー記事において、西川社長が株価連動型報酬(SAR)をめぐり、自分に都合の良いように行使日を変更して過分な所得を受けていたと暴露したのである。

 そして社内調査の結果、西川氏の報酬が4700万円分「かさ上げ」されていた事実が発覚する。監査委員会の永井素夫委員長は、「西川氏の指示ではなく意図的ではなかった」とコメントしているが、西川氏が不正報酬を得たのは事実である。西川氏がゴーン氏同様に不正報酬を得ていたとなると、経産省も庇いきれず、やむなくトカゲの尻尾きりをした。退任を発表した会見における西川社長の不満な顔が、それを表しているのではないか。

 こうして日産は今月9日、ゴーン氏らの不正によって「350億円以上」の被害を受けたとする社内調査結果を公表し、ゴーン氏らに損害賠償を請求する意向を示したついでに、西川社長が16日付で辞任し、山内康裕COO(最高執行責任者)がトップを代行。指名委員会が10月末をめどに正式な後任を決めると発表した。

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