JASRACは放送局、レコード会社、カラオケ店などから著作物の使用料を徴収、著作権者に分配する業務を行っているが、著作権管理がJASRACの独占状態にあることで、「音楽業界の活性化を妨げている」という指摘が以前からされていた。
今年4月には、最高裁判所がJASRACと放送局などとの契約方式について「他業者の参入を妨げており、独占禁止法違反の疑いがある」「市場支配力の維持や強化のため、正常な競争手段を超えて、包括徴収方式での事業を行った」と判断しており、司法判断に続いてエイベックスが離脱したことで、今後の業界動向が注目されている。
音楽著作権の問題について、AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役で弁護士の山岸純氏は、次のように解説する。
「もともと日本では、他人が作曲した音楽などを演奏することに対して『お金を払う』という文化が発達していませんでした。昭和6年、これを逆手に取ったウィルヘルム・プラーゲというドイツの外交官が『私は、ヨーロッパの音楽の著作権を管理している者である。ヨーロッパの音楽を演奏するなら、私に金を払え』と主張、当時の放送局やオーケストラなどに対して、演奏許可料を請求する事件が発生したことがあります。
当時は、インターネットや国際電話などの便利な通信技術もなかったため、プラーゲの主張が正しいのかどうかもわからず、日本の音楽業界は混乱に陥りました。そこで、日本政府は『外国人に好き勝手にさせるな』とばかりに『著作権に関する仲介業務に関する法律』を制定し、著作権を管理する業務は当時の内務省の許可を得た者に限ることにしました。
要するに、国のお墨付きを得た団体のみが(1)他人の著作権を管理して、(2)演奏許可料などを徴収することができる、としたわけです。この時、唯一国のお墨付きを得て著作権管理を開始したのが、JASRACの前身である大日本音楽著作権協会でした。この時、実質的に日本国内で著作権管理業務を独占して行う団体が誕生したわけです」
独占禁止法とJASRAC
国のお墨付きを得て誕生したJASRACだが、現在はその独占性が問題視されているわけだ。市場の公正な競争を維持するための「独占禁止法」について、山岸氏は以下のように語る。