ロイター通信によると、今回、両首脳が結んだ商談の契約額は400億ポンド(約7兆4000億円)に及ぶ。キャメロン首相は2012年、訪英したダライ・ラマ14世と会談し、中国との関係を悪化させたことがある。経済界から突き上げられて、以後は、関係の改善を目指していた。今回は十分に満足のいく成果が上がったのだろう。キャメロン首相は「英国は中国にとっての西側のパートナーだ」と胸を張った。これに対して、習主席も「中英関係は黄金時代を迎えた」と、訪英の成果を誇示した。
また、先月29、30日には、ドイツのメルケル首相が中国を訪問した。同首相の訪中は、今回で実に8回目だ。李克強首相が北京の人民大会堂で会談に応じ、「人民元の国際化」を促進するため、上海、中国金融先物、ドイツ証券の3取引所が2億元(約38億円)を共同出資して、フランクフルトに元建ての金融商品を扱う中国欧州国際取引所(CEINEX)を今月半ばに立ち上げることに合意した。ドイツは欧州における人民元の取引センターの地位確立を狙うという。欧州の投資家は、元建て債や元建て上場投資信託(ETF)を簡単に売買できるようになる。
ディーゼル車の排ガス不正で先行きが懸念されるVWのミュラー社長は、メルケル訪中団に随行。VW中国現地法人が、中国の国有銀行大手である中国工商銀行から営業・運転資金の支援を受けることになったと発表した。
独中両国は、AIIBを軸にインフラ輸出面での協力を拡大してシルクロード域内に進出することや、EUと中国の間の自由貿易協定の交渉を加速することにも合意したという。さらに、11月2、3の両日には、フランスのオランド大統領が訪中し、習主席と会談する。原子力、航空機、温暖化対策などで協力を話し合うという。
中国が着々と西欧諸国との関係を強化している間、安倍首相は何もせず、手をこまねいていたわけではない。
商社やプラントメーカーなど50社を伴い、10月22日から7日間の日程で、トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタンの中央アジア5カ国とモンゴルを歴訪。石油や天然ガス、ウランなどが豊富な同地域で、首相自らがトップセールスを行い、資源の獲得と、道路、空港、工場、原発、火力発電所などのプラント建設の受注に努めた。今回の外遊における受注総額は、2兆円規模に達した模様だ。
また、安倍首相は11月1日、韓国のソウルで李中国首相、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と3年半ぶりの日中韓首脳会議を行って共同宣言を採択した。3カ国の首脳会談を定例化して、来年は日本で開催すること、日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉を加速することでも合意した。冷え切っていた3カ国関係の改善に道を付けた。