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中村芳平「よくわかる外食戦争」

ワタミ、経営危機への入り口…訪日客殺到で驚異的売上増の「北海道」との致命的な差

文=中村芳平/外食ジャーナリスト
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ワタミ、経営危機への入り口…訪日客殺到で驚異的売上増の「北海道」との致命的な差の画像1和民の店舗(「Wikipedia」より/Asanagi)

 ワタミ(東京都大田区)は2014~15年3月期と2年連続で約180億円の巨額赤字を出した。主力の居酒屋「和民」「坐・和民」「わたみん家」などを15年3月期で102店舗、16年3月期で85店舗閉店、国内店舗全体の3割を閉店する大規模リストラに踏み切った。

 そして今年10月、100%子会社のワタミフードシステムズを吸収合併、同時に介護事業を損保ジャパン日本興亜ホールディングス(HD)に210億円で売却すると発表した。これによって16年3月期は3期ぶりに130億円の黒字に転換する見込みだ。

 だが15年4-9月期の中間決算発表では、赤字が当初予想の5億円から20億円に拡大し、依然として厳しい状況が続いている。とはいえ倒産の危機が去り、資金的な余裕もでき、新業態も登場した。串揚げと餃子の専門店「揚旬」、地産地消の「石巻酒場 わたみんち」「ニッポンまぐろ漁業団」など、脱・和民のブランドが立ち上がり、反転攻勢の芽が出てきた。

 最大のポイントが今年11月に開店した完全予約制のインバウンド(訪日外国人)専門の日本食店「銀政-GINMASA 六本木店」(137席)である。大手旅行代理店のエイチ・アイ・エスなどと提携、集客に万全を期し、今期5万人の計画だった訪日外国人客を倍増の10万人に上方修正した。不振の続くワタミの中で訪日外国人客の伸びだけは急成長している。ワタミの復活のカギは訪日客が握っている。ここ1~2年が正念場である。

 「ブラック企業」と批判され、2期連続赤字、債務超過寸前まで追い込まれたワタミが、介護事業を損保ジャパンに売却、3期連続赤字は免れ、16年3月期では130億円程度の黒字に転換する見通し。介護事業の売却資金があるうちに外食事業と宅食(食事宅配)事業の抜本的な立て直しを図り、大復活を遂げようとしている。

「ワタミが主力の外食事業で大復活するためには、傷ついた和民ブランドを捨て、新しく開発したブランドで勝負をかけたほうが立ち直りが早い。かつてすかいらーくグループ(東京都武蔵野市)が、ファミレスのすかいらーくブランドを捨てて新しく生まれ変わったように、ワタミも思い切って和民ブランドを捨てて新しく生まれ変わる覚悟が必要ではないか」(ワタミ関係者)

インバウンド需要

 ワタミが外食事業の立て直しで最大の狙いにしているのが、訪日外国人(インバウンド)である。ワタミは今年11月、訪日外国人獲得の戦略店舗、銀政を開店した。完全予約による訪日外国人専門の和食店で、昨年開店した「炉ばたや 銀政」を業態転換した。ワタミはこの銀政を復活の起爆剤にしようとしている。銀政の概要は後述するが、大ヒットする仕組みが出来上がっている。年末にかけて客数、売り上げを大幅に伸ばすのは確実である。銀政を首都圏や大阪などインバウンド需要の大きな都市に10店舗ほど展開する方針だ。

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

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