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中村芳平「よくわかる外食戦争」

ワタミ、経営危機への入り口…訪日客殺到で驚異的売上増の「北海道」との致命的な差

文=中村芳平/外食ジャーナリスト
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 訪日外国人は15年度で年間2000万人に迫る勢いで急増している。訪日外国人は飲食業にとって“神風”である。それなのにワタミは業績悪化が続き、訪日客取り込みの対策が遅れてきた。

 ちなみに日本の外食企業で訪日客にいち早く着目し、その集客に最も成功しているのが「がんこフードサービス」(大阪市)と「コロワイドグループ」(横浜市)である。

 寿司・和食業態が主力のがんこ(100店舗)は在日韓国人が多い大阪・関西圏が地盤であり、もともと韓国人旅行者がよく来店していた。訪日韓国人などの便宜を図るために、がんこは07年に英語、韓国語のサイトを立ち上げ、訪日外国人の集客に力を入れ始めた。その後、中国人ツアー客向けのネットを強化、現地でのプロモーション活動に力を入れた。中国人団体ツアーを受け入れた当初は、「単価が安い。予約客が約束通りに来ない。予約人数の変更は当たり前。料理の食べ残しが散乱する」などと、トラブルの連続であった。日本とは食文化・食習慣の違いがあるので仕方ないと我慢し、少しでも受け入れられるように改善したという。

 がんこでは中国や台湾などからの留学生をアルバイトに採用し、ツアー客とコミュニケーションを図り、サービスを充実させた。10年度には、訪日中国人客が2万人を突破した。がんこが訪日中国人の人気になったのは、江戸時代の豪商などの、歴史的な建造物を活用したお屋敷シリーズを現在までに8店舗展開しているからだ。日本の伝統的建築文化を伝える「がんこ高瀬川二条苑」(京都市、300席)では、「舞妓さんに出会える日」などのイベントを毎月開催、観光コースに組み込まれている。また、「がんこ銀座一丁目店」などでは「寿司にぎり大会」を開催、外国人ツアー客に喜ばれている。がんこは全社一丸となって訪日外国人の集客に取り組み、14年度には訪日外国人利用客数が40万人を突破した。15年度では50万人を目標にしているが、仮に客単価を5000円とすれば売上高は25億円になる。

コロワイドの周到戦略

 ワタミのライバルであるコロワイドも、訪日外国人の呼び込みに成功した。コロワイドはM&A(合併・買収)戦略で企業規模を拡大、北海道の食材を使った大型居酒屋「北海道」などを展開している。そのコロワイドが訪日外国人の“特需”に目覚めるのは、08年7月に「北海道洞爺湖サミット」が開催された時のことだ。

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

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