映画の中のコンピュータやロボットは、人のように考え、感情を持ち、自律した行動を取る。このような、SFの世界の常連たちは、人工知能(AI)を科学的な拠り所として描かれている。近年、このAI技術が急速に進化している。しかし、残念ながら、SFの世界のようにわかりやすいかたちではなく、さまざまなサービスの裏方として、成果を上げ始めているのだ。
身近な例でいえば、iPhoneに搭載されている音声認識秘書機能「Siri」の進化だ。マイク越しに話しかけると、インターネット検索をしてくれたり、該当エリアの天気予報を教えてくれたりする。
「曲名を教えて」と言って音楽を聴かせると、曲名だけでなく、アーティスト名、アルバム名まで教えてくれる。クラシック音楽の場合、同じモーツァルトの交響曲でも、指揮者やオーケストラ、録音時期によって、それぞれに特徴がある。Siriは、そういった特徴を瞬時に見抜き、膨大な選択肢(データベース)の中から見事に選び出すのだ。
こうした技術の背景には、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる、AIのブレイクスルー(躍進的)技術が貢献している。ディープラーニングとは、人間の脳の仕組みから学習する構造を模した基礎的な数学モデルのニューラルネットワークを発展させたものだ。AIでは、人間が学習するプロセスを模することで、さまざまな事柄を識別、判断できるようにすることが技術的な目標のひとつとなっている。
この目標が達成されると、コンピュータが人の顔を見分けたり、話し言葉(自然言語)を理解できたりするようになる。フェイスブックでは、集合写真などを投稿した際に自動顔認識による自動タグ付け機能があるが、そういった技術や前述のSiri が、その一例だ。
東京モーターショーに自動運転車のコンセプトカーが登場
筆者も大学時代、AIのプログラムを組んだ経験があるが、当時は学習が収束するまでに膨大な時間を要し、よく徹夜したものだ。AIの急速な発展の背景には、コンピュータの処理能力の飛躍的な向上がある。これによって、アイデアの段階でとどまっていたさまざまな成果が実用化され、私たちの身近なサービスにも反映されるようになってきた。
今後、AIは、さまざまな産業やサービス分野に活用の場を広げ、私たちの生活に深くかかわってくるだろう。例えば、グーグルは自社のAI技術を活用した自動運転で自動車業界に参入の意欲を示している。
こうした流れを受けて、10月29日(一般公開は10月30日から)から開催された「第44回東京モーターショー2015」では、日産自動車が自動運転をイメージしたコンセプトカー「ニッサンIDSコンセプト」を発表した。