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中国、粗悪な違法鋼材「地条鋼」の生産激増…日本企業に大打撃

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 中国の過剰生産能力の出現によって世界的に需要は低迷した。これにより、黒鉛電極やカーボンブラックなど東海カーボンの主力事業の収益力が落ち込んだ。それに加え、中国企業の台頭によってアジア市場を中心に価格競争がし烈化した。当時、東海カーボンの自助努力ではどうにもできないほど、世界の需給ギャップが弛緩してしまったといっても過言ではない。

 この結果、多くの市場参加者が、東海カーボンの業績が低迷を脱することは難しいと懸念を募らせた。なかには、中国の過剰生産能力の解消が進みづらいなかで、黒鉛電極事業は東海カーボンの経営の重石と化していると指摘する市場参加者も出始めた。16年2月に東海カーボンが公表した中期経営計画の説明資料では、聖域なき改革や組織風土の見直しの重要性が示されるなど、経営陣は自社の経営とそれを取り巻く事業環境にかなりの危機感を強めた。

“黒鉛電極ブーム”の出現と終焉

 一転して、17年ごろから黒鉛電極への需要が急速に高まり、東海カーボンの業績が大きく回復した。当時の状況を、“黒鉛電極一本足打法”と形容するアナリストもいたほどだ。

 無視できない影響を与えたのが、中国政府の政策だ。中国では、スクラップを溶かして固めただけの違法鋼材である地条鋼の生産が続いてきた。16年以降、中国政府は景気対策を打ちつつ、地条鋼生産への取り締まりを強化した。17年6月には、事実上、地条鋼の生産が停止に追い込まれた。それに加え、中国政府は大気汚染対策のためにも環境負担が相対的に小さい電炉の普及を重視した。

 これが黒鉛電極への需要を一気に高め、価格は急上昇した。18年度(1~12月期)、東海カーボンの営業利益は前年度から5.7倍程度も増えた。黒鉛電極事業の営業利益は前年度から約40倍も増加した。これは中国に影響された黒鉛電極ブームというべき状況だった。

 ただ、未来永劫、需要が拡大基調を続けることはあり得ない。どこかで価格はピークをつけ、相場は下落し始める。東海カーボンの株価推移をみると、18年10月中旬以降、株価は右肩下がりの展開だ。背景には、中国経済が成長の限界を迎え、従来以上に鉄鋼の過剰生産能力の問題が深刻化したことなどが影響した。

 それに加え、19年に入ると、生産停止に追い込まれた地条鋼の生産が息を吹き返し始めた。経済全体の成長率が低下し企業収益に下押し圧力がかかるなか、中国では品質よりも価格の低さが優先され始めているとみられる。黒鉛電極ブームは過ぎたと考えられる。

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