日産自動車ナンバー2の西川廣人CCO(チーフコンペティティブオフィサー)は、12月11日のルノー取締役会終了後、日付が変わった12日に記者会見で述べた。ルノー・日産とフランス政府による数カ月にわたる攻防は、フランス政府が譲歩するかたちであっけなく終息した。フランス政府の経営介入を回避する一定の担保を確保できた両社だが、ルノーを日産が支援するかたちは何も変わらないとの見方も強い。
両社が将来の経営に危機感を抱いたきっかけは、フランスのフロランジュ法だった。同法は、2年以上株を保有する株主の議決権を2倍にするというもの。これを拒否するためには、適用反対の議案に株主総会で3分の2以上の賛成が必要となる。フランス政府はルノーに15%出資する株主だったが、同法による議決権増を確実にするため、今年春に出資比率を19.7%にまで引き上げた。株主総会ではルノー経営陣が提出した適用反対の議案が僅差で否決され、導入が決定、同法が施行される2016年春からフランス政府のルノーへの出資比率は約28%に上がる。
ルノーは日産に43.4%、日産はルノーに15%出資しているが、フランスの会社法で40%以上の出資を受けている企業は、出資元に対して議決権を持てない。日産が経営再建後、ルノーの株式を取得して持ち合いにする際、ルノーは主導権を維持するため日産の株式をあえて40%以上に買い増して議決権を持たせないようにした。仮に日産がルノーへの議決権を保有していた場合、経営陣の議案は可決されていた可能性が高かった。
両社がフランス政府の議決権引き上げに反対するのは、同国内の雇用確保など経営に介入する懸念があるためだ。解雇や工場閉鎖などの経営の自由度を失うことも考えられる。特に、ルノーが43.4%出資する日産の経営介入も重大な懸念を持つ。
経営の自主性
すでに日産は、稼働率が低迷しているルノーのフランス国内の工場に、小型車の生産を移管することを決定している。フランス政府が、両社のトップであるカルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)に同国内の工場の仕事量を増やすよう要請したのを受けたもの。議決権を引き上げたフランス政府による経営介入によって、両社は経営の自主性を失いかねない危機感を抱く。
フランス政府と両社は、フロランジュ法による議決権引き上げ後の経営のあり方などを協議。フランス政府は、両社に経営統合を要請したが、両社は「現在のアライアンスのバランスを維持する」とこれを拒否するとともに、保有するルノー株式の一部売却を求めて協議は平行線をたどる。