シャープが政府系ファンド、産業革新機構の案に沿って再建を目指す方向となった。主力銀行みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が、実質的に債権放棄を求める革新機構の再建案を受け入れる方針を固めたことから、一気に動き出す。
革新機構は日本の技術力を高めるため、政府が2009年に15年間の期限付きで設立した投資会社だ。出資金3000億円のうち政府が95%(2860億円)、トヨタ自動車など民間26社が5%(140億円)を拠出。経済産業省と財務省から職員が出向している。革新機構は1月29日に内部の幹部会合である産業革新委員会を開き、経営危機に陥っているシャープと東芝の支援策の大枠を固め、3月末までに細部を詰める。
日産自動車出身の志賀俊之氏が革新機構の会長兼CEO(最高経営責任者)に就いてから、「日本の成長に貢献できる再編を積極的に進める」路線が強調されている。しかし、シャープや東芝の救済が、果たして革新的な事業なのか、という根本的な疑問がつきまとう。
事実上のシャープ解体か
シャープ本体に革新機構は3000億円規模の資金を注入する。具体的には、革新機構がシャープの第三者割当増資を引き受け、出資後に役員を派遣する。シャープ社長の高橋興三氏以下の経営陣を刷新する。
シャープの中小型液晶パネル事業は、世界的な価格競争の荒波にさらされ収益が悪化した。シャープ本体から液晶パネル事業を切り離し、近い将来、ジャパンディスプレイ(JDI)に買収させる。JDIは東芝とソニー、日立製作所の液晶パネル事業を革新機構が主導して統合させ12年に発足した。革新機構はJDIに35.6%出資する筆頭株主。狙いは“日の丸液晶会社”をつくることである。
シャープには7500億円の有利子負債があり、半分程度が液晶事業の負債と見られている。負債の一部を液晶の新会社に移し、メインバンク2行に1500億円程度の債務の株式化(優先株への切り替え)を求める。
一方、革新機構は東芝の白物家電を切り出し、相対的に競争力のあるシャープの同事業と経営統合する。白物家電の新会社にも革新機構は出資する構えで、電機業界の大型再編につなげる青写真を描いている。インターネットで遠隔制御できる「スマート家電」は世界的に市場が拡大する。日本勢の技術力が生かせる成長分野だと革新機構は位置付けているが、白物家電まで失えば、実質的シャープは解体されるかたちになる。