シネマコンプレックス(複合映画館)を展開するTOHOシネマズが、2015年12月に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ)の料金を一部の劇場で2000円に設定したことが話題になった。
この実質的な値上げ戦略は賛否両論を呼んだが、そもそも日本の映画鑑賞料金の1800円は、世界的に見ても高額とされている。ただし、これはあくまでも当日の窓口料金で、映画ファンの多くは前売り券や各種割引サービスを使って割安に鑑賞しているという現実もある。
「窓口で正規の料金を払っているのは、普段あまり映画館に来ないお客さんか、何を観るか決めずに訪れたカップルなどです。よく映画を観ている人たちほど、各種割引サービスや前売り券を駆使して、10円でも安く観る努力をしています。
物議を醸した『スター・ウォーズ』の特別料金も、前売り券を買っていれば1400円で鑑賞でき、TOHOシネマズが発行しているシネマイレージカードの会員であれば、いつでも1400円で観られます。『高い』と文句を言いながら2000円払って鑑賞しているのは、ただの情弱(情報弱者)ですよ」(映画業界関係者)
実際、日本の映画料金は高いのだろうか。日本映画製作者連盟が発表している「日本映画産業統計」の中に「平均入場料金」という項目がある。これは子供や学生料金も含まれているので一概にはいえないが、15年のデータでは「1303円」と算出されている。
アメリカ都市部での平均が10ドル(約1182円)前後といわれているため、換算するとほぼ同じレベルということがわかる。また、この平均入場料金が初めて1200円台に乗ったのは1992年で、もう20年以上も大きな変動がないことになる。
実際には、近年広がりを見せる3D上映やIMAX(映像や音響が最高水準の設備)などの特別興行はプラス料金がかかることを考えると、映画料金は実質的に値下がりしているともいえる。
「スクリーン数が増えたことで、シネコンチェーンが割引サービスを競い合っていることが背景にあります。紆余曲折の末、日本では料金を映画館側が自由に設定できることになっており、1000円にしても3000円にしても問題ありません。また、割引サービスも映画館や作品ごとに設定していいのです。こうしたサービスの充実が、平均料金の実質値下げにつながっていると思います」(同)