割引サービス活用で1000円以下の鑑賞も可能
そもそも、映画館側は入場料金で利益を上げようとは思っていない。なぜなら、仮に多少の値上げをしたところで、あまり割に合わないからだ。
「入場料金は映画配給側と折半するため、映画館側としてはうまみが少ない。むしろ、劇場内で販売するポップコーンやドリンクのほうが利益率が高いため、そちらで利益を上げる体制にシフトしています。そうなると、映画館は入場料金を下げて客を呼び込む必要があるため、割引サービスや会員カードの発行で顧客を囲い込むという戦略が採られるのです」(同)
前述したTOHOシネマズの「シネマイレージ」は年会費が初年度500円(更新時300円)で、クレジット機能付きなら初年度は無料だ。会員になると、前売り券鑑賞を含む有料鑑賞で6本観ると、1本無料で鑑賞できる特典がある。さらに、割引サービスは毎週水曜日の「レディースデイ」、毎月1日の「ファーストデイ」、毎月14日の「TOHOシネマズデイ」などがあり、いずれも料金は1100円だ。
では、これらの割引サービスを使って、月に1本映画を観るシミュレーションをしてみよう。
1100円で月1本鑑賞すると、年間12本で1万3200円になる。シネマイレージカードの初年度入会金500円を足すと、1万3700円だ。6本観れば1本無料なので鑑賞できるのは14本となり、14で割ると1本当たり約978円となる。さらに、鑑賞時間によってマイルが貯まり、1000マイルでポップコーンと交換することもできる。
こうしたサービスは各シネコンチェーンでも行われており、日本最大のスクリーン数を持つイオンシネマでは、毎月1日の「ハッピーファースト」、毎週月曜日の「ハッピーマンデー」、55歳以上限定の「ハッピー55(G.G)」などがあり、いずれも1100円で鑑賞できる。こうしたサービスを使いこなせば、日本の映画料金は決して「高い」とはいえないはずだ。
世にも不思議な「前売り券」
各種割引サービスを使わずに、どの劇場でも確実に安く映画を観るには、前売り券を使うのが手っ取り早い。映画の前売り券は、基本的に公開前に各プレイガイドや劇場窓口で買うことができるが、公開後でもチケットショップなどで手に入れることができる。
「前売り券はプレイガイドで個人に向けて販売されるだけでなく、企業や協賛メーカーなどの大口客がまとめて買い、社員の福利厚生や販促用に使われるというケースも多いです。また、前売り券は有価証券のため、経費のつじつま合わせに使われることもあります。有価証券ですが、公開時期を過ぎれば価値がなくなるというところがポイントです。チケットショップに持ち込めばすぐに現金化できる上、ほかにもいろいろな使い方ができます」(同)