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垣田達哉「もうダマされない」

某有名小売店、これが本当の“イートイン脱税”!レジで客に確認すらせず消費税一律8%

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「Getty Images」より

 先日、知人がある有名小売店に行くというので、筆者も同行した。その時に「これこそ本当のイートイン脱税になるのでは?」と感じたことがあった。その店は、大手チェーンストアでもコンビニエンスストアでもないが、誰もが知っている大型店である。買い物が終わって、お昼時でもあったのでイートインコーナーで軽い昼食をとることになった。知人は1年くらい前からこの店を利用するようになったが、毎週のように来るわけではない。ただ、この店に来るといつもそこで同じものを食べるという。

 筆者も同じものを食べることにしたが、会計は知人が一緒に払ってくれるというので、待っていようかと思ったが、イートインのとき、レジでどうするのか興味があったので付いていった。平日だったが非常に混んでいて、「マクドナルドより行列が長いな」と感じたほどだ。注文するのは1品だが、レジ回りや大きな看板のメニューを見ても値段は書いてあるが、本体価格なのか税込価格かはわからなかった。知人に聞いても「知らない」と一言。

「レジで“持ち帰りですか? 店内飲食ですか?”と聞かれるんだろう」と思いながら順番を待っていた。順番が近づいてきてレジの近くになったので、レジ係がなんと言うのか一生懸命聞いていたが、どちらにするかを確認している様子はなかった。「コンビニみたいに、イートインのときには会計時に申し出てくださいと書かれた小さな看板が、レジの横にあるのかな?」と考えていると、ついに順番が来た。

 知人は「○○を×個」と注文をしただけで会計が終わった。少し待つと、調理された商品が手渡されたので、知人は「あそこで食べよう」とイートインスペースで座って食べた。食べているときに知人に尋ねた。

筆者「イートインかどうか聞かれないの?」

知人「聞かれない」

筆者「値段は、増税前と同じ?」

知人「同じ」

筆者「増税前と後で変わったことないの?」

知人「何もない。皆同じように注文して、ほとんどの人が座って食べてるんじゃないかな?」

 そこで知人にレシートを見せてもらうと、そこにははっきりと「消費税率8%対象」と印刷されていた。

 筆者は法律の専門家ではないので、この店のやり方が違法行為に該当するかどうかの判断はできないが、少なくとも行政から注意を受ける行為だろう。なぜそう感じたのか、まず「イートイン脱税」とはなんなのかを考えてみよう。

 一部では「顧客がテイクアウトと言って買った商品を、店内で食べること」と説明されているが、これは正しくない。昨年10月の消費増税に伴う軽減税率適用において、客がどこで食べるとイートインに該当するのかについて、規定はない。レジでどちらの意思を示しても、どこで食べても脱税にはならないし法律違反でもない。では、どのような行為がイートイン脱税に該当するのかといえば、次の2つのケースが考えられる。

(1)消費者(顧客)が10%の消費税込みの金額を店側に支払ったのに、店側が8%の消費税しか国に納めなかった場合。

(2)店側が、会計時に消費者に「イートインかテイクアウトかの意思確認」をしなかった場合。

客は10%支払ったのに、店側が8%しか国に納めない

(1)は次のようなケースだ。例えば、テイクアウト商品もイートイン商品もどちらも取り扱っている店が、実際には100人中50人の客がイートインだったのに、税金を納めるときには100人すべてがテイクアウトと申告をした場合だ。これこそ意図的な脱税になる。

 今回の軽減税率制度で店側が一番困っているのは、「一物二価」が発生したことだ。一般的に、本体価格1個100円のハンバーガーは、イートインで注文すると110円を支払い、テイクアウトだと108円を支払う。消費者にすれば「まったく同じ商品だけれど食べるところによって値段が違う」という感覚を持つ人が多いだろう。

 しかし法律上は、店側は「イートイン用のハンバーガー」と「テイクアウト用のハンバーガー」を販売していることになる。顧客がどこで食べたかは税金面では関係ない。どちらのハンバーガーを注文したかだ。店側が「同じハンバーガーだから、両方合わせて本日は100個売れました」では、税法上許されない。イートイン用50個、テイクアウト用50個というように別々に集計しなければいけない。そして、その数量に応じた税金を支払うことになる。

 店側にすると、商品管理上は同じ商品なのに、税金面で違う商品になるので一物二価になる。マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのように、イートインとテイクアウトの販売価格が同一の店でも、税金面では異なる商品になるので、この場合も一物二価が生じる。

 ただし、こうしたケースがすべて脱税とは言い切れない。意図的でなくてもこうしたことは起こるからだ。例えば、レジ係の打ち間違いだ。会計時に顧客が「イートイン」と意思表示をしたのに、レジでは「テイクアウト」の処理をしたというミスをしたときだ。顧客が間違いを指摘することもあるかもしれないが、支払う金額が少なければ文句を言う人は少ない。

 特に、マクドナルドやケンタッキーのように、イートインとテイクアウトの販売価格が同一の時に起こりやすい。というより、顧客の指摘がほとんどないので、レジ係が気づきにくいといったほうが正確かもしれない。

 ただ税務上は、実際に100人中何人がイートイン用のハンバーガーを注文したのかを見極めることは困難だ。たとえ税務署の職員が店舗を一日中見ていても、座っている顧客がイートインと宣言したかどうかはわからない。ましてや、レジ係がミスをしたかどうかも判別はできない。意図的な脱税行為という証拠がなければ、法的な処分を下すことはできないだろう。

 店側の申告に頼るしかないが、あまりにも極端な場合は行政から指導されるかもしれない。たとえば、多くの顧客が座って食べているのに、税金面ではほとんどの顧客がテイクアウト扱いになっている場合だ。

客に意思確認をしない

 脱税とは言い切れないが、指導すべきケースが(2)である。ひとつは、イートインスペースがあるのに「イートイン用ハンバーガー」を用意していないケースだ。イートイン設備があるのに、すべてがテイクアウト商品でイートイン商品を一切扱っていないということは許されない。

 もうひとつは、顧客にイートインかテイクアウトかの意思確認をしていないケースだ。コンビニのように明らかにテイクアウト客が多い店の場合は、レジに「イートインの場合は会計時に申し出てください」という表示をすれば、店側から意思確認をする必要はないが、筆者が体験したイートインコーナーの店は、とてもそんな店には思えなかった。

 この店が、コンビニやスーパーのイートインと決定的に違うのは、「イートイン専用のレジがある」ことだ。さらに、コンビニなどと違って簡単ながらも「その場で店側が調理している」ことだ。その店はファストフード店だったが、店側からレジ係に対して、きちんと客にイートインかテイクアウトかを意思確認するよう指示があれば、すべての客に確認するだろう。そして、客はもしレジ係から確認されれば、正しく申告するだろう。

 増税が始まって3カ月以上が経過している。税務署がこの店の状況を確認すれば、実際にイートイン客がどのくらいいたのかはわかるはずだ。もし、ほぼすべての客がテイクアウト客だったとしたら、税務署は注意すべきだろう。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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