10月から消費税が10%に引き上げられ、税金の使い道に対する納税者の目は一段と厳しくなった。国会では安倍晋三首相が主催する「桜を見る会」の開催費の急増や私物化疑惑を野党が追及する事態になっている。「桜を見る会」は来年、中止と決まった。
11月8日、会計検査院が「平成30年度決算検査報告」を内閣に送付し、その概要がホームページに掲載された。会計検査院が1年間に実施した会計検査の成果を明らかにした報告書で、国の収入支出の決算を確認し、法令・予算に違反したり不当と認められたケースなどが記載されている。いわゆる税金の無駄遣いや保険料などの徴収不足といった不適切な事態は、「不当事項」「意見を表示し又は処置を要求した事項」など4項目に分類されている。
平成30年度の4項目の総件数(標記件数)は335件で、指摘した金額(指摘金額)は合計で1002億3058万円。収入関連が約65億円、支出関連が約782億円、その他(収入支出以外=記録の未記載など)が約155億円となった。
このうち悪質とみなされても仕方がない「不当事項」(検査の結果、法律、政令もしくは予算に違反し、または不当と認めた事項)は254件で総額57億2187万円にもなる。不当事項が指摘された中央官庁は次の10省庁。内閣府、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省である。このほか日本私立学校振興・共済事業団など9組織でも不当事項がみつかった。
不当事項の最多は厚労省で81件、18億4368万円
不当事項の実態をみてみよう。10省庁のなかで件数、額がもっとも多かったのは厚生労働省で、収入関連2件、9億3461万円、支出関連79件、9億907万円で合計81件、18億4368万円に上る。どんな不当事項があるのか。収入関連の2件は共に保険料徴収に関するもの。1件は労働保険の保険料徴収の過不足が2億3557万円。もう1件は健康保険、厚生年金保険の保険料徴収不足で合計6億9904万円となっている。
支出関連でもっとも多いのは国民健康保険の財政調整交付金の過大交付。この交付金は市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異によって生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するためのもので10道県・24市町村に合計2億2426万円が過大に交付されていた。