(「首相官邸HP」より。)
このうち、特に重視するのが「市場の創造」だ。そのため、10人の民間議員のうち2人の起業家を起用した。三木谷浩史・楽天会長兼社長(47)と秋山咲恵・サキコーポレーション社長(50)である。秋山氏は、競争力会議の紅一点だが、世間的には無名に近い存在だ。
サキコーポレーション(東京・品川区)は秋山咲恵氏が4つ年上の夫、吉宏氏と二人三脚で立ち上げたベンチャー企業。咲恵氏が社長兼CEO(最高経営責任者)、吉宏氏が副社長兼CTO(最高技術責任者)を務める。
同社は世界有数の産業用検査装置のメーカーなのだ。パソコンや携帯電話、デジタルカメラなどに使われる電子部品がプリント基板上に正しく配置されているかを瞬時にチェックする優れものなのである。
この秋山社長、安倍首相とは浅からぬ関係にある。小泉純一郎政権時代の03年10月、秋山氏は政府税制調査会(首相の諮問機関)の委員に選ばれた。第1次安倍内閣の06年11月には同調査会の特別委員を歴任している。
咲恵氏は奈良市出身。京都大学法学部に進学した彼女は、写真サークルで吉宏氏と知り合う。吉宏氏はロボット工学を専攻する大学院生だった。吉宏氏が咲恵氏に一目惚れして交際が始まったという。
卒業後、咲恵氏はコンサルティング会社のアンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア) に入社。一方、吉宏氏は松下電器産業(現・パナソニック)の無線研究所にデジタル画像処理の技術者として入った。二人は、入社後すぐに結婚した。
ビジネスコンサルタントの咲恵氏は、業界を調査するうちに、人間の目による検査に頼っていたプリント基板のチェックが、自動化される流れにあることを知る。吉宏氏が得意とするプリンターのスキャナー技術を応用すれば検査スピードは大幅に上げられるはずだと考え、2人はプリント基板の外観検査をする装置の開発を思いつく。
設立は1994年4月。川崎市内のビルの一室に15平方メートルのオフイスを構えた。国内初の本格的なインキュベーター施設、かながわサイエンスパーク(KSP)のスタートアップ企業の中で、“期待の星”といわれた。吉宏氏が開発したプリント基板実装工程の自動外観検査装置(=検査ロボット)を96年に発売した。
実装基板の両面を同時に検査する検査ロボットを04年に開発。卓上型検査ロボットでは世界でトップシェアを誇り、検査ロボット全体でも国内ではオムロンに次いで第2位。世界でも5指に入るまでに急成長した。