老害化した天才経営者・鈴木セブン&アイ会長、なぜ退任に?一介の雇われ経営者の末路
セブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)が退任するというニュースは、大きな驚きをもって受け止められた。84歳という高齢になっていたとはいえ、日本にコンビニエンスストアという業態を導入して社会インフラにまで育て上げた。今日に至るまでグループの総帥としてセブン&アイ・グループはおろか、業界全体の発展に尽力してきた。
流通業界における鈴木氏の功績は、ダイエー創業者でGMS(総合スーパー)を確立した故・中内功氏に勝るとも劣らないだろう。企業としてのダイエーが消滅してしまった現在、「残った唯一の巨星墜つ」という感慨が深い。
井阪社長の反乱
鈴木氏の退任は、4月7日にセブン&アイHD取締役会でコンビニ事業を担当する井阪隆一セブン-イレブン・ジャパン社長(58歳)を交代させる人事案が採択されなかったことにある。
同日の退任会見で鈴木氏自身が井阪氏の人事案をめぐる経緯を説明した。それによると、井阪氏に退任の内示を出したのは2月15日。その時点では従順に通告を聞いた井阪氏が、2日後に「納得できない」と強硬に異議を唱え出し、それ以降コミュニケーションが取れない状態となったという。井阪氏は「相談する人がいる」と鈴木氏側に伝えたそうだ。その相手というのが、創業者である伊藤雅俊名誉会長(92歳)だったという。
3月以降に開かれた指名・報酬委員会を前に、鈴木氏は伊藤氏を訪ね、井阪社長の処遇についての同意を求めた。すると、伊藤氏ははっきりとそれを断ったことを会見で鈴木会長が明らかにして、「こうしたことは初めてで驚きました」と、述べている。それまで伊藤家は経営に関してすべて鈴木氏に一任してきており、両者の信頼関係はとても強かった。
潮時だった鈴木氏
しかし私に言わせれば、大経営者の鈴木氏といえど齢80を越え、近年はその采配に疑問符がつくようになっていた。たとえば、2015年1月31日付本連載記事『セブン&アイ、株価下落の元凶“お荷物”ヨーカ堂を即刻売却すべき 超優良グループに変身』http://biz-journal.jp/2015/01/post_8770.htmlで私は、不調となっていたイトーヨーカ堂の売却を提言したが、その後に大株主となった米ファンド、サード・ポイントは同年末になって同様の主張の手紙をセブン&アイHDに送りつけている。また鈴木氏は「イトーヨーカ堂を立て直すまでは引退できない」としていると伝えられていたが、それに対しても「老害への警鐘」としての見解を同記事で示した。