マイナス金利は不動産各社に追い風になる。なぜなら、不動産各社は借金をして投資用の不動産を買っているため、金利低下のメリットを享受できるからだ。そのうえに、住宅ローン金利が下がれば販売にもプラスに働く。日本銀行が1月末にマイナス金利の導入を発表すると、東京株式市場で不動産関連銘柄が買われた。だが、実際には逆風が吹きつけている。マンションの販売が減少しているのだ。
首都圏マンションの1月の契約率は58%に落ち込む
マンション建築で業界首位の長谷工コーポレーションの株価は、マイナス金利導入発表後の2月1日に1339円の高値をつけたが、2月24日には一時891円まで急落。年初来の安値を更新した。その後も1000円前後で推移している。マンション販売の減速が伝わったためだ。
不動産経済研究所が発表した全国マンション市場動向によると、2015年の発売戸数は14年比6.1%減の7万8089戸。前年実績割れは2年連続となった。最大市場の首都圏は14年比9.9%減の4万449戸だった。全国のマンションの平均価格は4618万円で14年比7.2%上昇。調査を始めた1973年以降で最も高くなった。それまでの平均価格の最高はバブル期の91年の4488万円だった。建築作業員の人件費や資材の高騰を理由に販売価格が上昇したが、これが消費者の購買意欲を鈍らせる結果になってしまった。
さらに衝撃的な数字がある。
同研究所がまとめた16年1月の首都圏でのマンションの新規発売戸数は、前年同月比11.0%減の1494戸、2月は13.9%減の2237戸、3月も39.6%減の2693戸と4カ月連続で減少した。2月単月では、91年以来25年ぶりの低水準となった。東京23区は17.9%減、23区以外の東京都内は実に42.7%減と大幅な落ち込みとなった。
中古マンションの値上がりも止まった。不動産調査会社の東京カンテイによると、2月の東京23区の販売希望価格(70万平方メートル換算)は1月と同水準。1月まで19カ月連続で上昇していたのが頭打ちとなった。都心ほど上昇余力がなくなっており、都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、文京)の2月の価格は7111万円で、前月比0.4%下がった。2カ月連続の値下がりだ。不動産業界では「売り手と買い手の希望価格の差が広がっている」と分析する。
1月の首都圏の新築マンションの契約率は58.6%と前年同月より16.3ポイント低下。好不調の分かれ目とされる70%を2カ月連続で下回った。50%台はリーマン・ショック時とほぼ同じ水準である。