3月の新築マンションの1戸当たりの平均価格は5638万円で、10カ月連続で上昇した。15年の平均価格(4618万円)を2割以上、上回ったことになる。
首都圏では販売価格の値上がりが影響してマンションの売れ行きに急ブレーキがかかったのである。株安による逆資産効果も影響した。長谷工は首都圏のマンション建築の3割を占める最大手だ。業績の先行き懸念から長谷工株が売られたとみられている。
業績は絶好調
長谷工の業績は好調だ。16年3月期の連結決算の売上高は前期比19.9%増の7700億円、営業利益は56.9%増の670億円、純利益は57.7%増の450億円の見込み。このままいけば、過去最高益を更新する。
マンションの施工が好調で業績を押し上げた。16年3月期の民間分譲マンションの受注高は4365億円で、前期より122億円増える模様だ。15年12月現在、野村不動産のプラウドシティ大田六郷の632戸、積水ハウスのグランドメゾン江古田の杜の531戸、野村不動産のオハナ淵野辺ガーデニアの516戸などの受注残がある。
15年マンションの新規供給戸数に占める長谷工の施工シェアは、首都圏では32.8%。14年より5.8ポイント増加した。大手ゼネコンがマンションの建設を手控えている影響もあって長谷工に受注が集中した。
大手ゼネコンはマンション受注を手控える
15年後半から、マンションの傾斜が社会問題になった。横浜市都筑区の傾斜マンションは4棟すべてを建て替える。建て替えの費用は販売主の三井不動産レジデンシャルや元請けの三井住友建設などが全額負担する。
横浜市西区のマンションでは全5棟のうち1棟が傾き、ほか4棟で鉄筋に切断の疑いが出てきた。こちらも全棟を建て替える。建て替え費用は販売主の住友不動産と施工した熊谷組が全額負担する。住友不動産が住民に全棟建て替えを提案したと報じられると熊谷組の株価が急落。2月29日に222円(高値は2014年9月4日の420円)と年初来安値に沈んだ。
マンションの傾斜問題が相次いだことで、大手ゼネコンはマンションの受注に慎重になっている。長谷工は他社がマンション施工を手控えていることからシェアを高め、来期も収益を伸ばしていく方針だ。「住友不動産の傾斜マンション全棟建て替え工事も長谷工が受注するのではないか」と見る向きもある。
しかし前述のとおり、首都圏のマンション販売は氷河期に入ったという厳しい見方が出始めている。