夫婦で月額年金支給10.8万!民間老人ホームは一人月25万、公営は50万人待機
無届け介護ハウスが急増している理由
さて、1月に放送されたテレビ番組『クローズアップ現代+』(NHK)でも取り上げられていましたが、近頃、一軒家にベッドを並べただけの、あるいは畳の上に布団を敷いただけの「無届け介護ハウス」が激増しています。
なぜでしょうか。1に儲かるからで、2に潤沢なニーズがあるからです。ニュースなどで報じられてからは、異業種業界からの参入も相次いでいます。無届けなのは、老人福祉施設としての厳しい規制を満たしていないからです。
しかもニーズが高いので、これまで自治体や病院からの要請で次々老人を受け入れてきても、行政も見て見ぬフリで、取り締まりがされていなかったからなのです。東京・練馬区のマンションの1室で「ほほえみガーデン」を運営し、70代から90代の老人6人の介護サービスを行っていた50代の社長が、2016年初頭に初めて老人福祉法違反で逮捕されましたが、これは初のケースで稀有な例です。
24時間介護が必要な老人を家族が面倒を見るのは、とても無理があります。かといって、費用が比較的安い公営の「特別養護老人ホーム」は予算が不足してこれ以上増やせないため、もはや定員いっぱいで50万人以上の待機状態にあり、とても入所できません。民間の有料老人ホームは、入所一時金のないところが増えていますが、それでも平均月額は介護保険の自己負担分も含めて、25万円前後かかります。
前述の通り、現行の厚生年金平均受給額は夫婦で19万円です。これでは、とても夫婦の一方でさえ有料老人ホームには入れないのです。夫が自営業だった場合の夫婦合計での国民年金平均受給額は、たったの10.8万円です。これでは、絶望的でしょう。
そこで生まれてきたのが、スプリンクラーを設置したり個室介護をしなくても老人を預かれる「無届け介護ハウス」や「無届け老人住居施設」、あるいは正規の「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」ですが、老人を囲い込んで介護報酬を丸取りする施設が横行しています。火災や感染症の蔓延による事故も報じられていますが、解決のメドは一向に立っていません。保育所の不足問題と同質の課題がここにもあるわけです。
一般の住居に老人を預かり、ついでに訪問介護事業所も同時に起ち上げ、要介護度の認定を行うケアマネージャーを丸め込んで介護報酬の限度額いっぱいのケアプランを作成してもらえば、ものすごく儲かります。一番重篤な要介護度5なら老人本人の負担は3万円でも、介護報酬は総取りで35万円です(介護保険料半分・税金半分が原資)。