新型コロナ禍はなおも世界を混乱におとしいれ、ここ日本でもさまざまな業界にダメージを与えているが、その影響はお笑い芸人の世界にも及んでいるようだ。テレビ番組は軒並み総集編になるか、そうでなくともタレントたちはリモート出演が一般的になり、仮にスタジオ収録の場合でも、ソーシャルディスタンスを取って人数を減らすことが一般的になりつつある。つまり、テレビを主戦場に活躍してきた芸人にとっては、“出演本数の激減”を受け入れざるを得ない状況になっているわけだ。
一方、テレビ出演がほとんどなく、劇場やイベントの仕事を細々とやってきた“売れてない芸人”は、劇場が閉まっているため外出自粛をするのみ。緊急事態宣言以降は、イベントやバイトすらままならない状況だという。
そんな折も折の4月中旬、ダウンタウンの松本人志が、通称“松本ローン”を立ち上げたと東スポが報道。コロナ禍で収入が激減した芸人たちに、松本が自腹で上限100万円まで貸し出しするというプランを立ち上げたというのだ。吉本興業に近しい某放送作家は次のように言う。
「確かに、売れてない芸人たちはコロナで廃業寸前まで追い込まれてますからね。緊急事態宣言が解除されても向こう1年ぐらいは仕事が増えはしないでしょうし、たまのインスタライブ程度ではとてもプロの芸人とはいえません。吉本だと、バイトで食いつなぎ先輩にメシを食わせてもらって生活しているような芸人も多いですが、今後はそうした先輩連中も収入減が予想されますから、それも当てにできなくなる。今後もしばらくは“3密”回避は続くでしょうから、もはや『アメトーーク!』のような大人数のバラエティはできなくなる可能性も。いま業界では、コロナで芸人が半減するとまでいわれてますよ。
そんななか、後輩芸人を救うべく吉本興業のドン的存在である松本さんが、無利子無担保、上限100万円という松本ローンを立ち上げたわけですが、融資条件が“おもろいやつ”なので、及び腰になって申請できないという芸人も多いと聞いています」
吉本興業サイドの本音は、「松本ローンは止めさせたい」
では実際のところ、吉本芸人たちの間でこの“松本ローン”はどのように受け止められているのだろうか? 吉本興業に所属する若手芸人が、匿名を条件にこう明かす。
「僕には直接連絡が来ませんでしたが、芸歴10年めぐらいの先輩から話が回ってきました。今は新型コロナの影響で飲食店のバイトもままならないので、すぐにでも申請したいところなのですが、松本さんが言う『おもろいやつ』のハードルが高すぎて、なかなか申請しづらいというのが正直なところです。芸人同士のZoom飲みでも必ず“松本ローン”の話になるのですが、ムード的には『申請したやつはイタイ』『そこまでして松本さんに取り入りたいのか』という感じですね。おそらく、僕の周りでは申請するやつはいないと思います。
あと、ある若手芸人が申請しようとマネージャーに相談したところ、『ややこしいからやめといてくれ』と言われたと聞きました。というのも、結局本当に無利子無担保で松本さんから借りられるかどうかは、その芸人に借金がないかとか、反社とのつながりはないかとか、かなり身元確認を徹底してやるそうなんです。吉本サイドからすると、『ただ仕事が増えるだけだから、めんどくさい』ということなんでしょうかねえ」
松本人志、三又又三に激怒の“笑えない過去”
一部メディアでは、松本ローンの“事業規模”は「総額10億円規模」ともいわれており、「すでに審査が始まっている」という報道も。2019年6月の闇営業問題発覚以降、松本人志の動きは常に注目を集めてきたが、今回の彼の“真意”はどこにあるのか? あるスポーツ紙記者はこう分析してみせる。
「返済期間は5年ということらしいですが、おそらく返せないという芸人もいるでしょう。そのため松本さんは、特番を組むなどして『仕事で返済してもらう』というプランも考えているようです。闇営業の問題が表沙汰になって以降、松本さんは、“吉本を改革するためには努力を惜しまない”という姿勢を貫いていますが、まさかポケットマネーから“出資”するとまでとは誰も予想できなかったですよね。もちろん芸人の誰よりもお金は持っているのでしょうが、実は倹約家でもありますからね(笑)。
しかし、松本ローンの実務を手伝うのはどうしても吉本のスタッフになってしまうため、大変なのはむしろスタッフのほう。というのも、以前松本さんは、オフィス北野所属の三又(又三)さんに1500万円を貸し、踏み倒されそうになったという経緯があります。その時は、金額の大きさもありますが、『あの三又にナメられた』ということで大激怒し、今も共演NGが続いているほど。今回の松本ローンも、『松本さんに近づきたい』という浅はかな理由で申請してくる若手もいるとは思うのですが、このプランを推し進めれば、三又事件の二の舞が勃発するのことも十分あり得る。貸し出し業務の手伝いをしている吉本スタッフからすると、本音では『全員不合格にしたい』のではないでしょうか」
ぶちあげられた松本ローンにまつわる、松本人志本人とスタッフの悲しいまでの温度差。果たしてこの先の吉本興業に生まれるのは、笑い声か、それとも怒号なのか……。
(文=藤原三星)