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ただ、どんな場合も在庫ゼロを追求するというのは誤解で、必要な在庫は持つべきであるというのは、大野氏も繰り返し述べている。不要な在庫は持たないということは、必要な在庫を排除するということではない。
生産停止は実力の表れ
したがって、事故により生産が停止するのは、トヨタ生産方式の実力の表れとみるべきである。むしろ、生産が止まらない工場は実力のない工場であり、そんな工場も無駄に抱えていた在庫が尽きれば生産が停止するだけのことである。そんな自動車メーカーも残念ながらある。
したがって、震災でサプライチェーンが切断され生産が止まったことを、鬼の首を取ったように、TPSの欠陥として騒ぐのはもうやめるべきである。実力ある企業は、まずは止まるのが当たり前である、と見なければならない。
回復力も実力
ただ、止まったといって、その実力を喜んでいても仕方がない。トヨタは過去の災害の教訓として、部品の単一発注の排除という日頃の準備と、生産支援体制の早期立ち上げという緊急体制の2つを進めることで、短期間で生産再開を実現している。事故や災害の規模にもよるが、停止期間が年々短くなっていることに注目すべきであろう。
BCP(事業継続計画)の名のもとに、日常には不要な在庫を積み上げることを進める論者がいる。そして企業の中にはそれを真に受けて災害に備えるとして安易な在庫を積み増す企業もある。
これらの企業とは明らかに一線を画しているのがトヨタである。しかも、これこそ本来のBCPであるといえよう。災害や事件に備えるとは、生産が止まらないように在庫を持つ、無駄な分散生産をするということではなく、生産が止まっても短期に回復するダイナミクスを持つということである。そのことを今回もトヨタが教えてくれた。
(文=井上隆一郎/桜美林大学教授)
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