LINEは日米ほぼ同時上場という抜け穴を利用することによって、東証に特例を適用してもらったのだ。「他市場との重複上場時の特例」である。東証の外国株市場に、NYSEに上場している有力企業を引っ張ってくるための特例措置だ。そのため、LINEはどうしても日米同時上場、しかもNYSEに1日でも先に上場する必要があったわけだ。
LINEの親会社である韓国ネイバーは、買収からの防衛策として種類株の発行にこだわった。普通株の10倍の議決権を持つ種類株の発行を東証に要請したが、東証は株主の平等の立場からこれを認めなかった。LINEの上場が遅れた理由のひとつがこれだったといわれている。
LINEはすでに成長のピークを過ぎた企業との見方がある。15年12月期は、音楽ストリーミング事業で118億円に上る営業損失を計上したことから、最終損益は76億円の赤字だった。今年3月末時点で193億円の累積赤字を抱えている。16年12月期の業績予想は開示していない。
金融情報専門紙の日経ヴェリタスは、「40億円程度の黒字に転換する可能性がある」と予想しているが、PER(株価収益率)予想は43~49倍。フェイスブックの同32倍に比べて割高感がにじむ。主幹事証券は「公募株の応募倍率は25倍」と前景気を煽る情報を流し、7月14日付の株式専門紙上では「初値は2割高の4000円」と書いていた。結局、4900円の初値形成となったわけで、日米比較で日本のほうが明らかに高い。
業績を見ておこう。15年12月期の連結売上高は1206億円。広告収入が364億円で全売り上げの3割を占める。コンテンツ売り上げは492億円で、同4割。残りはスタンプなどコミュニケーション事業だ。
LINEは、コミュニケーション事業、ゲームや音楽などに課金するコンテンツ事業、メッセージのように個人に届くメッセンジャー広告事業の3つを収益の柱にしている。ゲームは今後2年間で2本以上のコンテンツを発売する計画だ。ゲーム自体は無料だが、プレーの回数を増やすためのアイテムなどが有料というスタイルで儲けている。
LINEの利用頻度は若年層ほど高く、毎日利用している人も多い。若者をターゲットに新たなサービスを相次いで生み出している点が評価されているが、広告の売り上げ比率は3割。フェイスブックが全売り上げの大半を広告で稼いでいるのと対照的だ。
かつてはアルバイトの応募やタクシーを呼ぶのに電話が使われていたが、今ではLINEで代用できるようになった。同社は、「今の若者は電話やメールよりLINEに慣れている。将来的には、出前を取ったり美容院の予約など身の回りのサービスがLINEで行えるようになる」と期待している。生活インフラとしてLINEを利用してもらうというビジネスモデルが成立するかどうかが、今後の成長のカギを握る。