新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3密を防ぐために多くの展示会やイベントが中止や延期に追い込まれている。その影響は大きく、日本最大のコンベンションセンターである東京ビッグサイト(東京国際展示場)をはじめ、関係各社の損失は膨大だ。
また、東京オリンピック・パラリンピックが1年延期されたことで、東京ビッグサイトは利用制限が長引き、それに伴う機会損失も計り知れない。「たとえば、展示会以外に販売促進の手段を持たない中小企業や展示会支援企業にとっては死活問題になる」と語る、日本展示会協会の迫宏治副会長に話を聞いた。
東京五輪延期で損失は4兆円に
――今、展示会業界はどのような状況ですか。
迫宏治氏(以下、迫) もともと東京ビッグサイトは、東京五輪開催に伴い国際放送センターやメインプレスセンターとして使用されるため、2019年4月から20年11月まで利用制限がされていました。これを受け、展示会の主催者、支援企業、出展者の合計8万3000社以上が約2.5兆円の売り上げを失うという試算をしていました。
そのため、各主催者は、代替場所を探すなどの対策を講じてきたわけですが、さらに新型コロナウイルスの影響で、多くの展示会やイベントが中止や延期に追い込まれています。これは関係各社に大きな損失をもたらしており、本協会のもとにも多くの嘆きの声が聞こえてきています。
当初、東京ビッグサイトは20年12月から全館使用可能になるという前提で、展示会やイベントのスケジュールが組まれていました。しかし、東京五輪が21年夏に延期されたことで、予定していた展示会やイベントが開催できなくなれば、さらに約5万の関係各社が合計約1.5兆円の損失を被ることになり、すでに契約を交わしている企業などとの間で補償の問題も出てくる可能性があります。
――新型コロナに加えて、東京五輪の延期で、さらに目算が狂ったということですね。
迫 東京ビッグサイトは日本有数で最大面積の展示会場・イベント会場です。その場所が五輪のメディアセンターとなり、しかも長期間利用が制限されるのはおかしいのではないかと、我々は数年前からアピールしてきました。
東京五輪が開催されるのであれば、その時期に華々しく東京ビッグサイトで産業見本市の催し物を開催し、海外から来日する方々に日本の魅力をアピールしたいという思いがありました。しかし、その思いはかないませんでした。
そもそも、日本は経済規模に比べて展示会やイベントの会場が少なすぎるという問題があります。東京ビッグサイトは東新展示棟、南棟と青海展示棟が増設しましたが、それでも世界各国と比較しても、まだまだ面積は足りません。
――4月には、東京都、自民党の展示会産業議員連盟などに要望書を提出しました。
迫 要望書の内容は、以下の6点です。
1.首都圏に仮設展示場を建設する
2.幕張メッセ、東京ビッグサイト西・南棟は展示場として使用可能にする
3.青海展示棟の使用期間をオリンピック後まで延長する
4.首都圏の他の展示会場も含めた調整
5.五輪後の撤去期間の短縮について再検討
6.既に募集を開始している展示会への支援
自民党議連には、本協会の浜田憲尚会長から甘利明会長に要望書を手渡し、展示会産業がおかれている厳しい状況と支援策の充実を訴えました。現在、関係各所と交渉、調整を行っています。一連の問題は、単なる展示会・見本市市場や展示会産業の問題だけでなく、日本経済の活性化と発展の問題という大局的な視点でとらえるべきテーマだと考えています。
また、協会として、コロナ禍における展示会再開のためのガイドラインを作成し、近日中に公表する予定です。一日も早く、より多くの展示会が再開され、日本の展示会業界ならびに日本経済が活力を取り戻すことを願っています。
(構成=長井雄一朗/ライター)