新型プリウスPHVに失敗は許されない
今秋に発売が予定されていたトヨタ自動車のプラグインハイブリッド車(PHV)、新型プリウスPHVが今冬に発売延期になった。トヨタの次世代車戦略は、出鼻をくじかれたようだ。
発売延期の理由についてトヨタは、同社の基準に照らして品質を十分なものにするには、生産ペースを当初の予定よりも抑える必要があり、そのための処置だとしている。直接の理由は、車体軽量化のために採用した新素材のドアの生産が遅れているためだ(8月4日付朝日新聞より)。
PHEVあるいはPHVと表記されるプラグインハイブリッド車は、しばらくの間は次世代車の本命と考えられている。二酸化炭素(CO2)削減の規制を強める欧州、米国そして中国は、ペナルティやインセンティブ(補助金)を用意してPHVの普及を後押しする。PHVの発売は、いまや自動車メーカーの義務である。それに応えるべく、トヨタはプリウスPHVを用意したのだが、問題を抱えたようだ。
PHVの導入を待ち構えるEU
EUでは、2021年に企業平均燃費をリッター24.2キロメートルに強める。現行の19.3キロメートルから24%も強化することもあり、PHVのCO2排出量の計算方法を優遇までして、導入を促進する。それを受けて、ほとんどの自動車メーカーがPHVを取り揃える。BMWは全モデルにPHVを用意し、独メルセデスベンツは17年までに10車種のPHVを揃える。
トヨタは14年のデータで、EUにおいてCO2排出量の少ない自動車メーカーの順位が第4位である(注1)。もっともCO2排出量が少なかったのは仏ルノー、続いて仏プジョー、仏シトロエンと続く。そのトヨタにしても21年の規制に応えるには、EVあるいはPHVの販売が必要に違いない。
プリウスなくしてトヨタの米国戦略なし
一方、全CO2排出量のうちに占める自動車のそれの割合が30%以上の米国は(日本は同18%ほど/注2)、カリフォルニア州を中心に10州が排ガスゼロの自動車販売義務化を18年モデルから強化する予定である。いわゆる「ZEV規制」だ。義務販売台数は20年にはEV、PHV合計で50万台、24年には100万台近くに及ぶ。義務化された州では販売台数の5台に1台がEVかPHVになる。
プリウスPHVの開発は、まさにこのZEV規制に向けたものだ。17年モデルまではHVが認められるが、18年モデルからは認められない。プリウスPHVなくして、トヨタの米国戦略はあり得ない。