世界トップを狙う
富士フイルムは医療用画像管理システム(PACS)で世界トップの座を狙う。X線などの画像処理診断装置で撮影した画像を保管し、医師がその画像を見て診断するシステムだ。国内のPACSは、18年に465億円市場になるといわれている。
国内の同市場は、富士フイルムがシェア23.1%でトップ。東芝メディカル(12.6%)、コニカミノルタジャパン(11.1%)、GEヘルスケア・ジャパン(9.5%)と続く。富士フイルムは人工知能(AI)を使ってX線画像撮影用の処理ソフトを全面的に刷新し、今秋からサービスを開始する予定だ。
12年3月、携帯型超音波診断装置の米ソノサイトを、15年5月に医療ITシステムの米テラメディカを買収した。東芝メディカルの買収に動いたのは、CTや超音波装置などの画像診断機器で国内首位だったからだ。東芝メディカルを手に入れ、PACSで世界首位の米ゼネラル・エレクトリック(GE)を追い上げるシナリオを描いた。だから逃がした魚は大きかった。
そこで、M&Aの対象を和光に切り替えた。医薬品事業も強化しており、がん治療薬や感染症薬を開発中だ。和光の技術を取り込むことで開発力を高め、再生技術を使った創薬支援事業との相乗効果を見込む。
医療事業の16年3月期の売上高は4235億円。19年3月期に2倍超の1兆円にする目標を掲げる。
減収・減益決算で株価は急落
16年4~6月期の連結決算(米国会計基準)の売上高は前期比7%減の5470億円、営業利益は24%減の275億円、純利益は54%減の111億円と大きく落ち込んだ。主力の複合機(複写機・プリンター・ファクシミリなどの機能をひとつにまとめた機器)が苦戦したことから、減収減益になった。同事業の営業利益は4割減った。
子会社の富士ゼロックスを通じアジア・オセアニアで複合機の事業展開をしている。その他の地域は米ゼロックスが販売している。同社への複合機供給が、同社側の在庫調整の影響で減少したのが響いた。カメラ関連事業はインスタントカメラ「チェキ」の販売が欧米で堅調で17%の営業増益。内視鏡などの医療機器や高機能材料を含むインフォメーション事業も1%の営業増益を確保した。だが、円高の影響(為替差損64億円)もあり、複合機の落ち込みを補えなかった。
連結営業減益となったことで7月28日の株式市場で、富士フイルムHDの株価は急落した。一時、前日比404円(10%)安の3647円まで下げ、年初来安値を更新した。市場では「営業利益は横ばい(前年同期は361億円)」とする声が多かったから、ネガティブサプライズとなり売りが膨らんだ。8月に入り3700円前後で推移しているが、年初来高値の5075円(16年1月4日)と比較すると3割近く安い。
(文=編集部)