都市ガスより2倍も高い悪徳プロパンガス業者が野放し…法外な解約金に要注意
毎月の請求書の隅っこに記された従量制の単価が、じりじりと勝手に値上げされていき、いつの間にか都市ガス料金の2倍以上になっていた、ということが起こるわけです。それに気づいて大慌てで解約を申し入れると、「途中解約だと違約金がかかります。15年契約なので配管工事料金20万円と給湯器の未償却代金11万円の合計36万円を払ってください」などと請求してきます。
要するに、タダという名目で配管から給湯器まで取り付けるのは(最近はエアコン無償貸与もあり)、毎月のプロパンガス料金を不当に膨らませて、さらに料金を載せて稼ぐための商法にすぎないわけです。
中小零細業者がうごめくモラルなきサバイバル業界
驚くべきことに、日本全国で使われる家庭用ガスのうち、プロパンガス利用者の比率は5割も占めています(団地などの70戸以上のガス消費家庭に簡易設備でガスを発生させ、導管で供給する簡易ガス事業を含む)。都市ガス業者が全国に約200社あるのに比べ、プロパンガス業者は約2万社もあるのです(ちなみにコンビニの店舗数は約5万3000店)。こんなに多くの中小零細事業者が入り混じっていれば当然ですが、いくらでも悪質な業者が出てきてもおかしくないわけです。
一般の人の中には、ガス供給業者を厳しい規制のある「公益事業」ととらえ、その代価は「公共料金」と思い込んでいる人も少なくありません。所管の経済産業省は、なぜこうした業界の実態を把握せず、行政指導なり監督、法整備なりを行ってこなかったのでしょうか。
アパートやマンションが都市ガス地域にもかかわらず、わざわざプロパン供給住宅になっている場合、業者との契約者は大家さんであるケースが多いです。そうした大家さんはアパート建設時に、都市ガスを導入する場合だと配管工事代から各室の給湯器代まで負担するのが普通です。ところがプロパン業者と契約すれば、配管工事代も給湯器代もタダになります。10室から20室ある集合住宅だと、この費用数百万円分が浮くのですから、大家さんは大助かりです。
しかし、その結果、大家さんの負担すべきだった費用を、入居者が負担するというかたちになるわけです。こんな理不尽で不当な契約は規制すべきです。入居者は、たとえ家賃が安かろうとも、プロパンガス代が高額ではおちおち冬場に気兼ねなく風呂にも入れないでしょう。
行政の規制もないままプロパンガス業界は、人口減少、オール電化などによる利用者減で、既存契約者の奪い合いまで行うような仁義なき戦い状態に入っています。くれぐれも一部の悪質な業者には気をつけてください。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)