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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

LCCの概念を破壊し始めたLCC…国際線参入続々で「1万円以下」時代へ、大手を侵食

文=牛場春夫/航空経営研究所副所長
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 このLCC10カ条が今、すべて変貌しつつある。その理由は至極単純明快で、一言でいえばLCCが低運賃志向の需要を開発し尽くしてしまったからだ。つまり、フルサービスの航空便を利用していた人たちのうちで、低運賃志向の人たちや、欧州やアジアでは長距離バスを利用していた出稼ぎ労働者たち、それに加えていまだに航空機に乗ったことがない人たちが安い便利なLCCを使い始めたのだ。20年かけて一通りこれらの新規や転移需要の掘り起こしが終わってしまうと、LCCは成長を持続させるために新たな市場の開拓に乗り出さざるを得なくなったのだ。その新たな市場とは、(1)ビジネス旅客と(2)長距離路線の2つである。

(1)ビジネス旅客の獲得

 低運賃志向の需要を開拓し尽くすと、LCCは旅客単価の高いビジネス旅客市場への参入を開始した。そこはFSCの牙城だ。LCCは、ビジネス旅客に乗ってもらうためにハブ空港への乗り入れを開始した。オンライン直販最優先の販売戦略を改めて、旅行会社経由の販売も開始した。旅行会社経由で販売するためには、GDS(グローバル・ディストリビューション・システム)にも参加し始めた。ちなみにGDSとは、世界の航空会社を、乗り継ぎ便の飛行区間を含めて瞬時に予約できるシステムである。高い利用料の支払いを嫌ってGDSに参加していないLCCも多い。

 2015年に年間旅客数1億人を運んだ欧州最大のLCCライアンエアーは、追加料金なしで予約変更ができるビジネス・プラス運賃を導入し、GDSはおろかグーグルの航空便検索である「グーグル・フライト・サーチ」にまで参加した。直販最優先のマーケティングからの決別である。

 その上で、ライアンは客室の快適性の改善にも乗り出し、座席ピッチ32~34インチのプレミアム・エコノミークラスを導入した。他のLCCでも座席ピッチの広いプレミアム・エコノミーやビジネスクラスを導入し、単一クラスから二クラス制に客室仕様を変更している。米LCCのジェットブルーは、フルフラットのビジネスクラスである「ミントクラス」を米大陸横断線に導入した。シンガポールのLCC、スクートは31インチのスタンダードシートに加え34インチのスーパーシートを導入、エアアジアXのビジネスクラスにはフルフラット座席が設置されている。

(2)長距離路線への進出

 法人需要の獲得に加え、長距離路線を開設しているLCCもある。それらのLCCは、A330型機やB787型機などの航続距離が長い中型機を導入している。北大西洋路線ではノルウェーのノルウェージアン・エアーシャトル、アイスランドのWOWエアー、カナダのウエストジェットが欧州と北米を結ぶ路線に就航している。長距離路線でも、LCCの運賃はFSCよりも安い。

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