元LINE社長・森川亮が挑む新メディア「C Channel」の革新性はどこに? 異端の経営哲学「ビジョンは不要」とは?
森川 そうですね。そういう意味で、先ほどお話しした、年収と自分の価値が、ギャップがあるとまずい。特に今の価値よりも年収が高いとやっぱりまずいと思うんですよね。僕がよく言うのは、今の日本は幸せすぎて、ある意味、動物園みたいな状況だと。定期的に餌を与えられるので、なんとなくニコニコしていれば食べていけるみたいな感じだと思うんですけど、これからはサバンナになりますから。自分で獲物を獲りに行って、ちゃんと食べていける人じゃないと、生き残れない時代になると思うんですよね。今から準備をして、備えて、自分なりに何か考えて新しいビジネスつくるとか、新しい稼ぐ方法を見つけるとか、そういう人材が活躍する場になるかなと思いますね。ある意味、それって自然なんですよね。日本が不自然なだけで本質的にはそれが世界の常識かなと思いますね。
松田 そうですね。人っていうのはやっぱり安心した瞬間から、企業もそうかもしれませんが、衰退が私は始まっていると思うんですよ。
森川 そうですよね。
松田 これで自分は大丈夫だと思った瞬間から、実はリスクは高まっていっているような気がするんですよね。ですから私は、やはり何もしないことが最大のリスクだというふうに思っていますので。
森川 ゆで蛙の世界ですよね。
松田 ゆで蛙の状況ですね。まさしく今、日本全体もそうなってきてしまっていますけれども。徐々に徐々に温度が高まっているのにもかかわらず、水温が高まっているにもかかわらず気づかない。ちょっとずつ温かくなってきているので、なんとなくこれでいいのかなと。
森川 出られないんですよね。
松田 出られないんですよ。ところが気がついたら、そのお湯が沸騰してしまうわけですよね。そうなると、実は死んでしまうというのが、そのゆで蛙現象ですよね。
森川 そうなんですよね。早く飛び立って。
松田 そう。まだ行けるうちに飛び立つ。
白石 そういったお話もすごく大事だと思われるんですけど、今の若い人たちを見ていて思うことは、安定を求めすぎてしまって、ちょっと元気がないように、勢いがないようにも思えてしまうんですよね。そういったこともいかがですか?
森川 そうですね。それがまさに僕が今回やろうとしていることにつながるんですけど、もっとやっぱりポジティブなメッセージをメディアが発信するべきかなと思ってます。やっぱりどうしても日々のニュースって、どちらかと言うと、いいことよりも悪いことが多いし、どうしても会社が成功した話よりはつぶれた話のほうが多く報道されるのは、どうしても、新しいことはダメだとか、これから日本の未来はダメだみたいに思っちゃうと縮こまっちゃうと思うんですよね。やっぱり世の中って半分は気持ちの問題ですから、これからもっと明るくなるとか、頑張れば成功すると思えば頑張るし、頑張ったらやっぱり成功するんですよね。そういういいサイクルがつくれたらいいんじゃないかなと思いますね。
白石 そんななか、お2人は大企業からベンチャー企業まで経験されていますけれども、その大企業とベンチャー企業の違いっていうのは、たくさんあると思いますけれども、どんなところだと思いますか?
松田 例えば大企業に入って、自分は将来は営業だけで食っていけるような、そういうベンチャー企業マンになりたいんだというふうに思っている方が、大きな組織で営業を勉強したいと思っても、やっぱりなかなか1人で若いうちから行かせてもらえないじゃないですか。例えば係長と一緒に行く、課長と一緒に行く。目上の人と一緒に行くと、日本は大体、目上の人がずっとしゃべり続けると。下の者は黙って横で聞いてなきゃいけない。
それはそれで勉強になるかもしれないですけれども、例えばベンチャーに入ったら、その瞬間から、「よし、君は営業部長だ」って言われるわけですよ。そうすると、急に出て行って1人で営業で取ってこいと言われるわけですから、とにかく会社の看板を背負って、とにかく自分は会社の顔としていかなきゃいけないということで、教えてもらえるっていう側面は少ないかもしれないですけど、その分、自分で学び取っていく。つまり、自分でなんでも学んでいこうと、自分で貪欲にいろんなテクニックを盗んでいこうと思っている人たちは、経験を積みながら働けるベンチャー企業は意外と向いているかもしれませんね。
白石 森川さん、いかがですか?
森川 そういう意味だと、本当に“地図”が役に立つ時代とか産業はいいんじゃないですかね。先輩が持っている地図を1個ずつ写しとって、その通り生きることによって成功する産業とか時代はいいと思います。ただ、今ほとんどの産業は変化している時代なので、地図を写しとっている時間があったら、やっぱり自分なりのコンパスをつくって、それを持って動き始めないといけないと思うんですよね。最初にお話ししたように、ストレッチしたときに成長するので、ストレッチできる環境に自分がいないと、もうすでに決まっているお客さんとすでに決まった話をして、また契約が済むみたいな世界にいたらやっぱりストレッチしないので、ある程度、自分なりにストレッチして自分のコンパスをつくる。そして自分の足で動き始める。そういうことが大事なんじゃないかなと思いますね。
松田 その通りだと思います。私も最初に言ったのは、期限を決めてやると。そこがないと、結局、ずるずる行ってしまう危険性が非常に高いんですね。大企業のほうは。
筑波を日本のシリコンバレーに
白石 そういったことを、若いうちというか、学生のうちに知りたいっていうこともありますけども。
森川 そういうのもあって、実は同じ大学出身ですし、去年から筑波大学から新しいベンチャーが生まれないかということで(松田さんと)一緒に取り組んだりしていまして。僕は今年の春から筑波の教授にもなりまして、起業の授業を設けて。
松田 そうですか。それはおめでとうございます。それは知りませんでした。
森川 それで起業家を育てようと。
松田 確かあれは筑波大学でサマーキャンプみたいなものを、クリエイティブキャンプをされて、私も呼んでいただいて講演したり、パネルディスカッションさせていただいたりしたんですけれども、筑波大学生から、ベンチャー起業家を育てようという試みですよね。
森川 そうなんですよね。ちょっとずつ今、生まれ始めてまして、あとは僕自身は10社ほどの社外役員をして、いろんな起業家を支援したりとか、そういう活動もやってます。
松田 なるほど。
白石 素晴らしいですね。若いうちからそういったことを習得できるというのは。
森川 最近、中学生の起業家も相談に来るんですよね。中学を辞めて、もっとアクセル吹かしたほうがいいのか、学校が大事でしょうか、みたいな相談を受けて。親に怒られちゃうとまずいので、勉強も大事だよとかいうことで返してるんですけどね。
松田 それすごい。ちょっと変わってきた感じがしますね、それは。
森川 そうですよね。