イケア初となるオフィシャルロゴを配したアパレルとグッズからなる「EFTERTRADA/エフテルトレーダ」(スウェーデン語で“後継者”の意味)コレクションが、7月31日(金)よりIKEA原宿にて先行発売されたということで、今回はその様子、そして実物に触れて感じたことなどをレポートしていきたい。
エフテルトレーダは東京カルチャーからインスピレーションを得て生まれた日本発の商品であり、バーコードのモチーフはベストセラー商品である「BILLY/ビリー 本棚」から受け継いでいるという。その内容は以下のとおりで、7月21日のプレスリリースから前評判が高くなっていた。
・持続可能な調達先から仕入れた、綿100%からできたソフトな肌触りのTシャツやパーカー、タオル
・生地にリサイクルポリエステルを使用した持ち運びしやすい折りたたみ傘
・全国のイケアストアで導入している無料の給水スポットでも使用でき、ペットボトルの削減にもつながるウォーターボトル
・レジ袋の代わりに使えるバッグ
初日のオープンは午前11時で、筆者は10時15分頃到着。整理券をもらうことは予想したが、「どのくらいの人が実際に来て、東京発を手にするのか」見当がつかなかった。もらった整理券はオープン1時間後の12時から入れるもので、「意外に少ないか?」とも感じた。というのも、この店舗が開店した当初(6月8日)は、イケアへの入店自体が2時間待ちであった。「この企画は、夏休みに突入する東京の若者へ十分にアピールできていたのだろうか」「関係者だけにしか周知できていなかったのではないか」などと考えながら、約2時間をつぶした。
11時50分に整理券を持って現地へ戻ると、「12時~をお持ちの方はこちらへ並んでください」と売場近くへ誘導された。並ぶ場所も前後の間隔をひらく工夫があり、上記のような商品紹介を渡された。「1商品につき購入は5点まで」「原宿のみ販売期間中は配送できない」などのルールを設けており、8月7日からの全国販売までは“限定感を守る”のだろう。
12時、商品に触ることができた。その前にはイケアファミリーカードの有無を確認される。というのも、商品には会員限定価格がある。これも常套手段だが、この店舗の来店客には若者層が圧倒的に多いことを考えると、今回の販売を新規会員獲得のキッカケと考えているのではないか。店内は撮影禁止であり、その様子を画像で紹介できないが、陳列や商品の置き方などは、従来と変化はない。ただ、Tシャツやスウェットシャツはサイズ(S/M、L/XL)があるため、黄色いTシャツを着たスタッフが、サンプルでサイズ感を確認できることを勧めてくれた。
12時15分、ほかの商品も見た上で、2階のレジで精算。この時に整理券の確認を求められた。このコレクション商品は仕切られた場所にあり、まあ確認ということだろうか?
これは今回購入したもの。
・Tシャツ 999円(会員価格。通常は1499円)
・水筒 299円(会員価格。通常は399円)
コレクションではないが、記念にクノーリグ バッグ(99円。会員価格なしだが原宿店限定)も購入。
その着心地や洗濯後の印象がどうなるかは、まだ確認できていないが、冒頭に記した商品ごとのコンセプトは、十分に伝わってくる。イケアはエフテルトレーダのコンセプトについて、プレスリリースで次のように説明している。
「発売を記念して、コレクションのアパレルを着こなし、東京を特別な存在にする若者たちを、それぞれの自宅で撮影したルックブック(デジタルフォトブック)を作成しました。若く個性的な男女と時間をかけて向き合い、彼らが家を通じてどのように自分を表現しているのかに焦点を当て、その一人ひとりのいきいきとしたプライベートな姿をこのルックブックに詰め込んでいます。
今の東京を生きる5人の若者たちが、世界でいちばん大切な場所であるそれぞれの家で過ごす、リアルな姿を撮影したこのルックブックには、IKEA原宿のオープンを記念してパートナーシップを組んでいる、日本で最も話題のバーチャルモデルのimmaも登場します。都心での限られたスペースの中で自分らしい時間を楽しむ様子を、イケアのスタイルを通じて発信します」
人や都市と、商品はどう交わるかを描こうとしていることには、ほかにない意思を感じることができる。アパレル業界が厳しいといっても、若者にとってファッションは自分の個性、意思を表すにはとても重要なアイテムであることには変わりない。「ベーシックデザインで機能的で」と謳う方法を採らず、リアルな生活にどう馴染むのかを考えさせるところがイケアらしさであろう。
ただ、今後に工夫が必要なこともあるだろう。
洗濯表示の縫い付け部分が長さ18.5㎝もあり、身長183センチの筆者では腰部分に来るものの、これだけ大きいと肌に触れて気になる人も多いかもしれない。世界各国で販売するブランドに共通の悩みだが、今後変わってくるだろうか。
さて、エフテルトレーダシリーズは今後、全国展開されていくことで、イケアファンの間では着用も増えるだろうし、SNSにも多く登場しそうだ。多くの種類を増やすのではなく、“当初の商品を大事に、コンセプトをしっかり伝えることを繰り返す”。そんなシナリオが実を結ぶことは、リスクヘッジと称して品番だけを増やす従来型の商品計画を、業界関係者が見直すキッカケにもなるだろう。
(文=黒川智生/VMIパートナーズ合同会社代表社員)