衣料品が売れない百貨店
衣料品の不振も深刻です。衣料品の売上構成比は16年3月期が36.3%で、09年の39.8%から年々縮小傾向を示しています。特に衣料品のなかでもっとも大きな比率を占める婦人服が打撃を受けている状況で、16年の構成比は20.3%と、09年の24.2%から大きく後退しています。
衣料品の販売不振は、三越伊勢丹だけの問題ではありません。百貨店各社が抱えている問題です。ショッピングモールやアウトレットモールの拡大、ファッション通販の充実などにより、百貨店で衣料品を購買する必要性がなくなりつつあります。また、ユニクロなどファストファッションの台頭により、百貨店が扱う高額衣料品の需要は低下しているといえます。さらに、消費者の節約志向から、過去に買った衣料品を積極活用するリユース意識の高まりも影響しているでしょう。
衣料品以外の産業との競合も考えられます。「モノの消費」から「コトの消費」へ移行している近年では、携帯電話やインターネットなどによる通信費、交際費、サービス分野などへの消費が増え、衣料品にかける資金が減っています。モノのなかでも、購入を減らしても困らない衣料品は、振替対象の最前線にあるといえるでしょう。百貨店が主に扱う高額衣料品となるとなおさらです。
三越伊勢丹では、地方店の不振および衣料品の不振が鮮明になっています。従来どおりの百貨店業を続けていては、退潮は避けられないでしょう。そうしたなか三越伊勢丹は、13年9月に編集型小型店「MI PLAZA(エムアイプラザ)」の1号店を青梅市に出店しました。三越伊勢丹のブランド力を生かした雑貨や食品ギフトを展開し、半径2km圏内に住んでいる生活感度が高い消費者をターゲットにしています。
不振傾向の衣料品を外し、雑貨と食料品に特化することで収益性を高めようとする狙いが見えます。また、シーズン、歳時記、オケージョン(行事)に合わせた売り場提案を行うことで、コトの消費にも対応した店舗づくりを行っています。そして、カジュアルな雰囲気の演出と、地域コミュニティの拠点となる「集いの場」を提供することにより、弱みとなっている地方での出店を進めることができます。既存のサテライト店と合わせて19年3月期までに140店舗体制の実現を目指すとしています。