対して、ライバルのキリンホールディングスの16年1~9月期の海外綜合飲料事業の売上高は4208億円で全社の27.3%、営業利益は313億円で27.2%を占める。
海外展開でアサヒはキリンに大差をつけられている。その挽回策が海外M&Aである。
そこで、欧州ビール会社4社を買収したのに続き、東欧5カ国のビール事業の買収に手を挙げた。さらに、ベトナム国営ビールメーカー、サイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)の買収を目指し、ベトナム政府が11月に実施する入札への参加を前向きに検討している。買収額は2000億円程度とみられており、これも含めると買収総額は1兆円を超える。
日本国内の市場縮小が続くなか、アサヒは乾坤一擲の勝負に出た。だが、東欧事業やベトナムの入札には、欧米のファンドやアジアのビールメーカーの参戦も取り沙汰されている。首尾よく買収できても、高値づかみになるリスクがつきまとう。アサヒは、果たして国内企業から脱皮できるのか。17年に最大の転機を迎える。
中国の頂新ホールディングの株式評価損を371億円計上
アサヒの16年1~9月期連結決算の売上高は、前年同期比0.5%増の1兆3655億円と横這い。営業利益は9.7%増の1026億円と増益だったが、純利益は360億円と47.8%減った。
子会社を通じて出資する中国の食品大手、頂新ホールディングの株式評価損を371億円計上したことが響き、減益になった。頂新ホールディングは中国経済の減速が逆風となり、即席麺を製造する子会社の業績が悪化した。
ドル箱のスーパードライの販売数量は3.8%減った。第3のビール、クリアアサヒは10.5%増と好調。第3のビールが、ビールや発泡酒の落ち込みを補い酒類事業の売上高は1.3%増えた。
国際事業は為替の影響(258億円の目減り)で11.8%の減収。国内3事業(酒類・飲料・食品)が堅調だったことから全社の売上高は微増となった。
16年12月期(通期)の売上高は前期比0.5%増の1兆8750億円と予想する。買収した欧州4ビール会社が連結決算に加わることから150億円上方修正した。営業利益は4.1%増の1407億円、純利益は4.7%増の800億円と従来の見通しを据え置いた。欧州のビール事業買収に伴う関連費用がかさむためだ。
国際事業は年間の予想で売上高は4.4%減の2394億円、営業利益は16.2%減の117億円の見込み。欧州ビール事業の買収で売上高は増えるが、為替の影響で減収となる。営業利益は買収費用55億円を計上するため減益としている。
(文=編集部)