ところが、実際の16年12月期通期の業績は、売上高が700億円、営業利益は68億円の赤字となる見込みだ。中計経営計画と比較すると、売上高は150億円下回り、営業赤字は48億円下振れした。
不振の最大の原因は、バーバリーの後継として三陽商会が百貨店向けに売りだしたマッキントッシュロンドンとブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジの新ブランドが、バーバリーの代役としては力不足だったことだ。中期経営計画の発表を延期して、計画を抜本的に見直さざるを得なくなった。
百貨店が主戦場のアパレルは出口が見えない
三陽商会はリストラも実施した。6月に全従業員の2割に当る250人の早期希望退職を募集、10月までに249人が応募した。希望退職の実施に伴う退職金などの費用がかさみ、16年12月期に特別損失として26億円を計上する。13年6月にも希望退職を実施しており、276人が退職した。
だが、人員削減だけでは業績は上向かない。30以上あるブランドのうち、17年8月までにポール・スチュアートスポーツなど合計10ブランドを廃止する。昨年末に1478カ所あった売り場のうち、今年80カ所、来年170カ所の計250カ所を閉鎖する。保有している株式や資産の売却も進める方針だ。
しかし、起死回生の成長戦略は打ち出せない状況にある。主力としてきた百貨店という販売チャネルの衰退が背景にあるからだ。リーマン・ショック後、消費者は手軽なファストファッションを好む傾向が強くなった。スマホが普及し、ネットでファッション衣料を購入する機会が増えてきた。消費者の百貨店離れが進み、百貨店を主戦場とするアパレルメーカーの経営を圧迫している。
来年2月に発表する新中期計画で、効果的な業績浮上策を打ち出すことができるだろうか。
(文=編集部)
●続報
三陽商会は杉浦昌彦社長(62)が17年1月1日付で社長を退任。取締役に降格したうえに、3月下旬に開く株主総会後に取締役も退任する。杉浦氏は「大きな赤字を出した責任を感じている」と12月16日の記者会見で述べた。新社長に就く岩田功取締役(57)は経営企画畑出身で17年2月に公表予定の新しい中期経営計画の取りまとめ役。自ら先頭に立って改善に取り組むとしているが前途は多難である。17年1月から役員報酬を最大30%カットする。現状の15%カットから30%に拡大する。
岩田次期社長は12月16日の記者会見で「100年後を見据えた新しい方向性を作り上げる」と抱負を語ったが、10年後どころか明日の企業の姿さえはっきり見えてこない。営業経験のない新社長の経営のカジ取りを不安視する声が社内外にある。インターネット通販の強化を掲げるが、この分野はすでに激戦区。百貨店以外の販路の拡大も具体策が見えているわけではない。背水の陣のトップ交代だが、三陽商会の漂流はすぐには止まらないだろう。