実はスタバやコメダをしのぐ人気の個人経営のコーヒー店が存在した!そのこだわりがハンパない
茨城県の北部に、ひたちなか市という人口約15万人の都市がある。県庁所在地・水戸市に隣接しており、玄関口のJR勝田駅は東京駅から特急で約1時間20分の距離だ。
近年、スターバックスコーヒーもコメダ珈琲店も、同市に出店した。両店共にお客でにぎわうが、実は現地でもっとも人気が高いコーヒー店は「サザコーヒー」という個人経営の店だ。JR品川駅ビル「エキュート品川」(東京都港区)などにも店舗があるが、地元色を深掘りしながら店の評判を高めてきた。今回は、大手に対抗する個人店の独自手法を紹介してみたい。
看板商品となった「徳川将軍珈琲」
「コーヒーを深めるために国内外の歴史を学び、現地に足を運んでその国や地域文化に触れるのがモットーです。その文化をもとにストーリーを創り、商品に反映してきました」
こう話すのは、サザコーヒー会長の鈴木誉志男氏だ。1969年、20代で「且座(さざ)喫茶」(当時)を開業したが、開業前は錦糸町の行楽施設、東京楽天地で映画の興行プロデューサーをしていた。同氏によれば、「且座は『座って茶を楽しみましょう』という意味」で、中国の僧で臨済宗の開祖・臨済義玄の言葉だという。20代から40代まで茶道を学んだ同氏が、その思いを喫茶店の店名に込めた。そうした経歴と文化への造詣の深さが、後述する茨城発の商品開発にも生きている。
大手チェーン店をしのぐほど、サザコーヒーが評価を高める点は次の3つだ。
(1)ストーリー性のある商品開発と味の裏付け
(2)コロンビアの農園運営など、コーヒー豆へのこだわり
(3)地元イベントでの無償提供で固定ファンを増やす
(1)の事例として象徴的なのは、「徳川将軍珈琲」だ。1998年に放送されたNHK大河ドラマ『徳川慶喜』にヒントを得て開発した。江戸幕府15代将軍・慶喜(水戸藩9代藩主・徳川斉昭の七男)がフランス人の料理人を雇い、1867年に大坂(現大阪)で欧米の公使をもてなした歴史にちなみ、江戸末期のコーヒーを再現した。
インドネシア産の最高級マンデリンを用い、慶喜の曽孫にあたる徳川慶朝氏がサザコーヒーで焙煎技術を学び、製造したものだ。店舗では「徳川将軍カフェオレ」の名前で提供して人気商品に育て上げた。