実はスタバやコメダをしのぐ人気の個人経営のコーヒー店が存在した!そのこだわりがハンパない
茨城大・筑波大と連携したコーヒーを開発
2016年には、茨城大学の依頼を受けて「五浦(いづら)コヒー」という商品を開発した。近代日本美術の開拓者として著名な岡倉天心(覚三)ゆかりの地・北茨城市五浦にちなみ、天心が飲んだであろう味を再現した。コヒーはコーヒーのことで、天心直筆の手紙の表記に基づく。
だが、商品開発に際しては、地元からの反発もあった。日本文化や東洋思想の大家である天心は、英文の著書『THE BOOK OF TEA(茶の本)』が知られており、「天心とコーヒーと五浦を結びつけるのは違和感がある」との意見が出た。つまり、コーヒー店の経営者が、そうした商品を開発するのは我田引水ではないかと思われたのだ。
そこで行ったのが、文献の徹底調査と茨城大との連携による「お墨付き」だ。たとえば、文献では、天心が渡米してボストン美術館に勤務した時代の当地のコーヒー事情や流通事情を調べた。また、同大の小泉晋弥教授、清水恵美子准教授らとともに研究を進め、当時ボストンで流行していた浅煎りのコーヒーを再現した。商品パッケージには、天心が建てた六角堂(現在は同大が管理する)を水墨画風に描き、店こだわりの取っ手のない器でコーヒーを提供している。
県内もうひとつの国立大である筑波大学とも提携している。筑波大はブラジル・サンパウロ大学およびサンタ・クルス病院と協定を結んでおり、同病院の院長が所有するアリアンサ農園のコーヒーを使った商品をサザコーヒーが開発し「筑波大学アリアンサエステートコーヒー」として発売した。
もちろん、話題性だけでは人気商品に育たない。サザコーヒーはコロンビアに直営農園も持つほどコーヒー豆の栽培に注力し、ほかの生産国にも頻繁に足を運び、価格が高騰した時期でも良質な豆の調達をしてきた。本社横の工場ではドイツ製の焙煎機を備え、抽出・焙煎技術も磨き続ける。「モノづくり」の品質あってこその「コトづくり」なのだ。
「タダコーヒー」と呼ばれる無償提供
同社ではこだわりのコーヒーを、地元のイベントで惜しみなく振る舞う。次回は2017年1月29日、全国から2万5000人のランナーが参加する「勝田全国マラソン」で実施予定だ。同マラソンでのコーヒー提供は、大会名物のひとつとなっている。地域PTAの小規模な会合でも無料で提供する。口の悪い常連客には「サザではなく、タダコーヒーだ」とからかわれるほどだ。