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2023.02.10 17:41
2017.01.15 00:12
大崎孝徳「なにが正しいのやら?」
トラブルで客3時間待ちの某航空会社、ビジネスクラス客優先の差別対応は「正しい」のか?
一般に、企業間競争が激化し始めたといわれる1980年代に、それまでの新規顧客の獲得や取引時点にのみ注力するマーケティングに対して、一人ひとりの顧客と関係性を構築・維持し、忠誠心の高い顧客に育てていく重要性を説く「関係性マーケティング」という考えが広がりました。実際に、新規顧客の獲得よりも既存顧客を維持するほうが大きな利益をもたらすといった研究成果も数多く報告されました。
こうした考えのもと、今回話題に挙げている、航空会社におけるマイレージプログラムや搭乗頻度の高い顧客の優遇、また小売店におけるポイントカードなどが急速に普及してきたわけです。
しかし、こうしたサービスは、大きくとらえれば結局は値引きの延長にすぎず、「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉通り、関係性マーケティングの本来の趣旨とは異なっていると筆者は捉えています。もちろん、業界のなかで1社のみが行うのであれば、競争優位性の創出となるかもしれませんが、ライバル企業も追随してくると、あっという間に同質化したサービスとなってしまいます。逆に、他社が行っている以上、自社がやめるわけにはいかないという消極的な理由により、やむなく継続している企業も少なくはないでしょう。
むしろ近年では、優遇されない顧客の不満に注目した研究が目立ってきています。こうした不満の影響は決して小さくはなく、優遇プログラムにより逆に利益を損なっているケースも多いと指摘されています。
もちろん、優遇されて喜ばない顧客はいないでしょう。一方、逆の立場に立てば、優遇されている客を見るのは決して気分のよいものではないでしょう。
こうした相反する問題をいかに解決していくかが、関係性マーケティングにかかわる取り組みを行っている企業における新たな課題といえるでしょう。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)
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