青学の陸上・原監督、脱「上下関係」管理術…なぜ20~30代前半の能力を最大限発揮?
スポーツの世界と、企業経営の世界
今年の箱根駅伝で3年連続優勝とともに大学駅伝の3冠を達成した青山学院大学の原晋監督、そしてプロ野球・北海道日本ハムファイターズの監督として昨年日本一に輝いた栗山英樹監督。今、日本のスポーツ界で最も注目を浴びている監督といえば、この2人ではないだろうか。この2人の監督はともに、それまでの業界の常識とされてきた人材育成や戦い方を捨てて、自分なりの新しいやり方を実践してきた。また、20~30代前半のいわゆるミレニアル世代と呼ばれている若者たちと向き合い、信頼関係を築くことに成功している。
企業の経営をしていく上で、スポーツの世界から学べる点は多い。スポーツの世界での監督と選手の関係性は、企業でいう経営者と従業員のようなものだ。スポーツの世界は、企業の経営よりも短期間で結果を出すことが強く求められる。結果が出れば賞賛されるが、出なければサヨナラという厳しい実力主義の世界だ。
また、主力選手のほとんどは20~30代前半で構成されている。企業でいえば新入社員から部下を持ち始めた中堅社員に当たるが、この年代はそれまでの世代と働く価値観が異なっており、どうすればこの世代のモチベーションを向上させ、能力を発揮させることができるか悩んでいる企業も多いのではないだろうか。このあたりの手掛かりを見つけるために、原監督と栗山監督の2人の名将が、日頃どのように選手たちと付き合い、成果へとつなげているか観察していこう。
名選手、名監督にあらず
まずは、2人の経歴をざっとみていく。結論からいうと、読売ジャイアンツの長嶋茂雄元監督や早稲田大学駅伝チームの渡辺康幸元監督のように往年の名選手であったかというと、お世辞にもそうとはいえない。原監督は中国電力という社会人の実業団チームに所属したが、結果を出すことができず、入社5年目で競技生活から引退。その後は、中国電力の営業マンとして陸上とは無縁の生活を送っていたが、約10年後に青山学院大学の駅伝監督に就任した。
対して、日本ハムの栗山監督も、プロ野球選手としてヤクルトスワローズに入団したが、同じように結果を出すことができず7年目には退団。その後、長年にわたってプロ野球の解説者やスポーツキャスター、大学教授等をしており、プロ野球チームのコーチ経験などを経ず、日本ハムの監督に就任した。