一方、東京新聞は「事実に基づかない論評が含まれる」と番組を批判するならば、どこが事実に反するのかを明らかにすべきだった。中途半端な取材で、かえって読者の信頼を損ねたのではないか。「何がいけなかったのか」を書くべきなのに、長谷川氏本人の釈明もない。謝っただけで検証になっていない。東京新聞は、長谷川氏が司会として事実を歪めた内容に異を唱えなかった点は批判すべきだが、社論と違う点を問題にすべきではない。
まず、問題点の1つ目は、番組放送から1カ月後の謝罪文掲載であるにもかかわらず、論説副主幹の弁明を含めないのは、“長谷川論説副主幹隠し”であり、なぜ本人の主張を聴取できなかったのか、あるいは聴取したが掲載できなかったのかという点である。
2つ目の問題としては、放送法4条4項の規定「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を無視した番組である点だ。同番組の企画としては、一方的な主張を笑顔交じりで各出演者が若い女性たちに囲まれた中で繰り返すことが特徴であるとしても、ジャーナリストとしての視座を気にかけない長谷川氏の笑顔交じりの主張は、東京新聞購読者に「購読をやめよう」という気分にさせる。
3つ目の問題として、TOKYO MXは、「議論の一環として放送致しました」との見解を示してきたが、同番組はヘリパッド建設をめぐる問題を過去にどれほど取り上げてきたのかということである。同局にとって最大のCMスポンサーであるDHCシアターの制作番組であることにより、歯切れの悪い反省に追い込まれているのか。もしくはBPOの判断待ちなのか。
同局の前では連日、『公共の電波でウソを流すな』といったような横断幕を掲げ抗議する市民が少なくない。そのため、同局の人気番組『5時に夢中」(月~金:17時~)のラストではスタジオの外から明日の天気予報を伝えるのが恒例になっていたが、今では狭いスタジオの中から天気予報が伝えられている。
まるでトランプ米国大統領のように、情報民主主義社会に敵対的な主張に呼応する『ニュース女子』の報道姿勢は、テレビ放送が国の免許事業であることを忘れた、視聴者との信頼関係を遮断する“壁づくり”に汗を流していると糾弾せざるを得ない。
(文=編集部、協力=服部孝章/立教大学名誉教授)