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信越化学工業、超高収益企業の秘密…「多品種少量生産」「世界シェア首位」で値崩れと無縁

文=編集部
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信越化学工業 HP」より

 信越化学工業が次世代通信規格「5G」向けの電子材料を相次いで発売した。5Gの通信速度は現行の4Gと比べて100倍。高速・大容量の5Gの特長を存分に発揮できる素材が求められる。プリント基板や基地局のアンテナに使える材料として3つの製品を開発。21年に量産化を目指す。

 ひとつは「石英クロス」。5Gは高周波の電波を使うため、電気信号が損失しやすい性質を持つ。従来の配線基板で使う樹脂では通信性能を維持するのが難しいとされてきた。石英クロスは極細の石英の糸を原料とし、配線基板の材料として使えば信号の損失を大きく減らすことができる。

 5G対応の半導体ウエハー向けには表面に窒化ガリウム(GaN)層を形成した製品を開発した。スマートフォンなどへの搭載を働きかける。

年間配当は前期比20円増の1株当たり240円

 10月27日、2021年3月期の連結決算の予想を公表した。売上高は前期比7.4%減の1兆4300億円、営業利益は7.2%減の3770億円、純利益は9.9%減の2830億円を見込む。純利益は市場平均(QUICKコンセンサス)の2939億円(6%減)を下回る。ただ、前期に計上した政策保有株の売却益(78億円)を除くと、市場の期待通りの着地となる。

 期末配当金は、第2四半期末配当金(110円)から20円増やし、1株当たり130円とする。年間の配当の合計は前期の220円に対して20円増の同240円となり、6期連続の増配となる見通しだ。年間配当は6年で2.4倍となる。

 21年3月期第2四半期(20年4~9月)の連結決算の売上高は前年同期比9.7%減の7105億円、営業利益は12.5%減の1843億円、純利益は15.0%減の1403億円だった。

 信越化学の事業は塩ビ・化成品、シリコーン、機能性化学品、半導体シリコン、電子・機能材料、加工・商事・技術サービスの6つに大きく分けられる。住宅用の建材に使う塩化ビニール樹脂と半導体用のシリコンウエハーの2つが収益を支える屋台骨だ。塩化ビニール、シリコンウエハーとも世界シェア首位である。

 塩ビ・化成品部門の第2四半期の売上高は前年同期比15.5%減の2138億円、営業利益は27.7%減の374億円。米国での塩ビの販売に、コロナの意外な追い風が吹いた。4~5月は都市封鎖などで落ち込んだが、米住宅市場の回復で持ち直した。感染拡大で都市の生活を避け、郊外に住宅を買い求める人が増えているためだ。9月の米住宅着工戸数は前月比1.9%増えた。こうした動きを背景に4月を底に塩ビ・化成品は回復基調にある。

 塩ビは需要増から値上げも浸透しやすくなっている。9月に続き10月も値上げできる見通しとなった。販売増だけでなく、利益面でも下期(10月~21年3月)にかけて上向く。

 シリコンウエハーの販売も堅調だ。シリコンウエハーは半導体を構成する部品で、パソコンやスマートフォンのCPU(中央演算装置)やメモリー、ICチップ、太陽電池、車など実にさまざまな分野で使われている。

 シリコンウエハーの半導体シリコン部門の第2四半期の売上高は3.8%減の1891億円だが、営業利益は1.4%増の755億円。半導体の需要増に加え、顧客の半導体メーカーや受託生産会社が、米中対立の激化の懸念から在庫を積み増す動きが続いた。同部門の営業利益は全社の41%を占める稼ぎ頭となっている。

 今回、5G特化型の石英クロスを開発したのは電子・機能材料部門だ。第2四半期の売上高は1.6%減の1096億円だが、営業利益は335億円と0.7%の増益となった。モーターに使うレアアース磁石や半導体回路の形成に使うフォトレジスト(感光性耐食被膜)なども伸びた。

高付加価値製品の多品種少量生産が強さの秘密

 信越化学の特徴は収益性が高く、安定していることだ。第2四半期決算は減収・減益だったが、売上高営業利益率は25.9%だ。営業利益率が15%以上だと、世界でエクセレントカンパニーと呼ばれるが、信越化学は日本を代表する超優良企業である。部門別の売上高営業利益率は塩ビ・化成品が17.5%、シリコーンが20.8%、機能性化学品が20.3%、半導体シリコンが39.9%、電子・機能材料が30.6%となっている。

 多品種少量生産が強さの秘密だ。顧客と用途に合わせた素材を共同開発するから付加価値は高い。こうした高付加価値商品が売上の70%を占める。汎用品と違って値崩れしにくく、少量生産でも、きちんと利益を確保できる。

 半導体シリコン事業は稼ぎ頭だが、半導体関連は市況の変動を受けやすい。もし、シリコンウエハーが市況の影響を受け苦戦しても、他の事業がそれを補って稼ぐため、不況抵抗力は抜群だ。

 キャッシュリッチであるのも心強い。ゲーム「あつまれ どうぶつの森」が大ヒットした任天堂や信越化学が屈指のキャッシュリッチ企業なのである。だから、株式市場での評価も高い。11月4日、年初来高値の1万4790円をつけた。年初来安値(8751円、3月17日)と比較すると69%上昇した。時価総額も6兆円を上回り、総合化学会社の旭化成(1兆2000億円)や三菱ケミカルホールディングス(8400億円)を凌駕している。

 不安材料はやはりコロナだ。欧米では感染者が再び増加に転じている。冬場を迎えて感染拡大が続くと、回復しつつある米国での住宅着工件数が落ち込みかねない。塩ビの販売に影響が出てこよう。

(文=編集部)

【続報】

 株価は連休明けの11月24日、11月13日につけた上場来高値を再び更新し、15980円(820円高)となった。

 11月25日も続伸。一時、16545円(前日終値比630円高)。終値は16410円(同495円高)となった。株価の上昇に弾みがついた。

BusinessJournal編集部

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