JDIは5月18日、東入来氏が次期社長に内定していた人事を撤回し、有賀修二社長が続投すると発表した。東入来氏は代表権のある会長に就任し、CEOを兼務する。代表権は東入来氏一人が持つ。
上場企業が内定した社長人事を、健康上の理由などなく変更するのは極めて異例だ。この時からJDIの異変が次々と明らかになってきた。平取締役に降格することが決まっていた有賀氏が社長を続投するのが、そもそもおかしい。
「東入来氏がトップであることに変わりはない」という説明も説得力に欠ける。JDIのトップ人事の決定権が会社側にないことは、これまでにも明らかになっている。
JDIは17年3月期決算で3年連続最終赤字(316億円の赤字)となり、「17年3月期は、なんとしてでも黒字にする」という公約が破られ、株価が急落したばかりだ。
今回、会長兼CEOをクビになった本間氏は「17年3月期に最終黒字にするのが私の責任」と胸を張っていたにもかかわらず、5月10日の決算発表の席にも姿を見せず“敵前逃亡”した。いわば経営責任の放棄だ。
三洋電機副社長を務めた本間氏は、15年6月にJDIの会長兼CEOに就任。主要顧客であるアップルのiPhone販売不振などで16年に資金繰りが悪化。株価も低迷し、革新機構が750億円の金融支援を決めた。本間氏の経営責任を問い、革新機構がJDIの経営体制の刷新を迫ったのが実態だ。JDIは、革新機構がソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業を統合して、12年4月に発足した経緯がある。
経営者としての力量を正当に評価することなく、本間氏をJDIに呼び寄せたのは、ほかならぬ革新機構=経済産業省だった。その本間氏を今度は革新機構が解任した。
18年3月期も赤字になる可能性
JDIは18年3月期の利益の見通しを公表していない。続投することになった有賀修二社長は決算会見で「(黒字に)できるかできないかは申し上げられない」と答えた。黒字化に自信を持てないのだ。
17年4~6月期の連結営業損益は150億円の赤字(前年同期は34億円の赤字)。17年3月期決算と同時に公表した。
革新機構の意向に翻弄されるJDIは、とうとう株主も経営陣も従業員も報われない会社になってしまった。
(文=編集部)