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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

最大で補償金100万以上?多発する航空機のオーバーブッキング、知られざる対応【後編】

文=牛場春夫/航空経営研究所副所長

 その一方で、旅客権利保護のための新たな規定の必要可否を会計検査院に検討させている。これを受けデルタ航空は、今までの2倍以上となる2万ドル相当のトラベルバウチャーを提供する権限を空港責任者に付与した。また、サウスウエスト航空はオーバーブッキングそのものを中止した。

 カナダ政府においては、オーバーブッキングによる搭乗拒否禁止を含む旅客権利保護法を制定することとし、18年の立法化を試みることとなった。

今後はどうなるのだろうか?

 航空会社は、売り切りモデルのLCCを除いて、収入の機会損失を最小限にするためにオーバーブッキングを今後も継続するだろう。航空会社は常に「オーバーブッキングは公衆の利便向上に必要である」と言っている。つまり、ノーショーによって空席が発生すれば、その便に乗りたがっていた他の旅客の搭乗機会を喪失してしまうことになり、ひいては公衆利便を阻害するというのだ。適正なオーバーブッキングを実施することにより、より多くの搭乗希望旅客に座席を提供することができるので、すなわち公衆利便が向上するという理屈だ。

 それはさておき、今後はどうなるのだろうか。それこそビッグデータ解析のテクノロジーの進化により、航空会社はノーショーを頻繁に行う(約束を守らない)顧客を割り出すことに成功するかもしれない。また同一路線を運航する複数の航空会社間の予約データのクロスチェックを可能にして、ダブルブッキング(二重予約)を突き止めるシステムも開発されるかもしれない。そしてAI(人工知能)を駆使したYMSの予測能力も向上するだろう。そうなれば、オーバーブッキング発生の確率は大幅に低下、否、究極的にはなくなってしまうかもしれない。

 ノーショーや二重予約をしばしば実施する顧客に対して、航空会社は混雑便の予約優先順位を低下させるなどの対策を取るようになるかもしれない。すでにエアビーアンドビーやウーバーが行っているように、航空会社も顧客の評価をするようになるということだ。

 テクノロジーといえば、航空管制システムや航空機のテクノロジーについても今後さらに進化することは間違いない。航空機の信頼性もますます向上、天候や天変地異の自然現象による場合を除いて、航空便の遅延や欠航もなくなっていくのではないだろうか。また空港におけるセキュリティーチェックの方式も、バイオメトリクス認証技術を使った「No Fly List(テロリストやハイジャッカーなどを搭乗阻止するための米政府の搭乗拒否リスト)」の危険人物の割り出しや、先進手荷物スキャナーによる危険物探知が、瞬時に実施されるようになるだろう。

 そうなれば定時性が改善し、空港の安全検査のハッスルも軽減され、航空旅行の快適性が飛躍的に改善するだろう。IATAの予測によれば、20年後の世界では、現在の倍のおよそ35億人(ユニーク搭乗旅客数、航空便区間ベースでは延70億人以上)が航空旅行を楽しむことになるというのだから、そうせざるを得なくなるはずだ。
(文=牛場春夫/航空経営研究所副所長)

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