果たして、パッケージデザインとして許される範囲なのか――。そんなことを考えさせられる商品が今、物議を醸している。話題になっているのはコンビニエンスストアチェーン大手セブン‐イレブンが今月発売した「練乳いちごミルク タピオカ入り」(税込246円)だ。
セブンのTwitter公式アカウントは「プルプル食感のタピオカと、ゴロッとしたいちご果肉のW食感が楽しめます」とPRしている。だが今回、特に問題になっているのは食感でも味でもなく、タピオカといちごミルクが入っている容器のデザインだった。
同商品はいわゆる“カップコーヒー”などと同じような透明なプラスチック容器を用いたカップ飲料だ。ところが、同商品にはその側面に帯状にいちごの果肉ピューレを彷彿とさせる半透明な赤色の塗装が施されている。さらに、カップ底部にも果肉が沈殿しているかのような塗装がされている(冒頭の写真参照)。
ネット上では「果肉がたくさん入っている様に見せる詐欺」と批判も
この容器に対して、Twitter上では「イチゴ果肉がたくさん入ってる様に見せるカップ詐欺」(原文ママ、以下同)「デザインしてて良心痛まないのかね」「さすがに容器に色つけるのはナシでしょう…」などと批判の声が上がっている。
セブンといえば昨年、サンドイッチ「厚焼きたまごミックス」が「パンいっぱいに厚焼きタマゴが挟んであるかのように思えるが、開いてみるとまるでハリボテだった」などとインターネット上で指摘を受けたり、弁当が「上げ底や2重パッケージなどになっている」と批判されたりしていた。当サイトも10月16日、記事『セブン、“ハリボテ”卵サンドや“上げ底”弁当が物議…広報部に直接聞いてみた』で取り上げているので参照してほしい。
昨年から、セブンの弁当やパンに関しては「リニューアルするたびにサイズが小さくなったり、内容量が減っている」などという指摘がネット上で取りざたされている。パッケージに関しても、ローソンのプライベートブランド(PB)商品のパッケージが「わかりにくい」などと物議を醸したことも記憶に新しい。
「コンビニ商品は一瞬で商品の良さを正確に伝えることが大事」
商品開発者として約730点のコンビニ商品を企画した経験を持つ流通アナリストの渡辺広明氏は、こうしたコンビニ業界の現状に対して語る。
「今回のセブンの件は、優良誤認を与える可能性があると思います。顧問先の会社の従業員女性2人に、この商品を試してもらいました。彼女らの第一印象は『いちごの部分が分離していて気になりますね』とのことでした。その後、飲み終わってから『これ、絵だったんですか!?ダメじゃないですか』と驚いていました。
優良誤認かどうかで一番大事なのは、買ったお客様がどう判断するかだと思います。そこが大きなポイントで、商品開発者は優良誤認をしないような商品を作らなければいけない責務があります。少なくともセブン‐イレブンはいろいろなことがネットで話題になっています。もっと注意する必要があったのではないでしょうか。
また今回の商品は、セブン限定商品です。つまり、セブン本部がジャッジしないと、店頭に並びません。
優良誤認をさせるような意図なく、前向きに作ったパッケージだったとしても、実際買ったお客様が『びっくりした』『思っていたのと違った』と認識されているのであれば注意をする必要があるのだと思います。
最近のコンビニ商品のパッケージは、『わかりにくい』ものが多く、残念です。例えばローソンのPBです。牛乳とかお茶とかのイラストが非常に小さく、店員でも間違えて陳列してしまうことも多々あり、お客が後ろから賞味期限が新しい商品を取ると違う商品が陳列されていて間違えて買ってしまったなどのケースも発生しているようです。
コンビニではお客様に一瞬でわかりやすく商品を伝える必要があります。瞬間で、お客様に良いところを伝えて、瞬間で買ってもらうことが大切なのです。
横文字を多用せず、日本語で商品名をきっちり表示し、商品の内容や良さを明確に伝える商品デザインの方向に、もう一度立ち返ってほしいですね。そうしたわかりやすさが前提にあってはじめて、装飾をおしゃれなものにしたり、凝った意匠にしたりできるのだと思います」
コンビニ業界の商品開発はもはや迷走感すら漂う。大手コンビニ各社は、改めて「消費者目線との商品とは何かを考える時期にきているのかもしれない。