マツモトキヨシHDが3位に転落
大手5社の売上高が5000~6000億円でひしめき合うドラッグストア業界は、戦国乱世の様相をみせている。
今年最大の出来事は、“業界の盟主”として22年間君臨してきたマツモトキヨシHDが売り上げ首位の座から滑り落ちたことだ。
16年度連結決算は、大手5社のなかでマツモトキヨシHDだけが減収だった。M&A(合併・買収)や新規出店に積極的な他社と、合理化を優先するマツモトキヨシHDの戦略の違いが出た。
その結果、マツモトキヨシHDは業界トップの座をウエルシアHDに明け渡した。しかも今回、ツルハHDにも抜かれて3位に転落した。背後からサンドラッグとコスモス薬品がひたひたと迫ってくる。
マツモトキヨシHDの失速は、はっきりと株式時価総額に映し出された。時価総額(8月31日終値時点)はツルハHDが6409億円でトップ。サンドラッグ(6118億円)、コスモス薬品(4986億円)、ウエルシアHD(4522億円)と続き、マツモトキヨシHDは4086億円で5位だ。
ドラッグストア再編の口火を切ったのは、流通最大手のイオンだった。ドラッグストアを成長事業と位置付け15年9月、イオン傘下のウエルシアHDが、イオン系列のCFSコーポレーションを完全子会社とした。これでマツモトキヨシと並んだ。17年2月期決算でCFSの売り上げが通期で寄与したため、ウエルシアHDは6231億円となり、マツモトキヨシHDを抜きトップに立った。
だが、ウエルシアHDは“三日天下”で終わった。ツルハHDが杏林堂薬局を買収して首位に躍り出たからだ。今後は、抜きつ抜かれつのデッドヒートが繰り広げられることになるだろう。
再編劇は、これからが本番かもしれない。ツルハHDは、イオンが音頭を取って結成したドラッグストア連合「ハピコム」のリーダー的存在だからだ。
イオンはツルハHDの議決権ベースで13.14%(自己株式控除、17年5月期末時点)の株式を保有する筆頭株主。イオンの岡田元也社長兼グループCEO(最高経営責任者)は、ツルハHDの取締役相談役(社外取締役)を兼務している。
北陸で最大のクスリのアオキホールディングス(HD)は、ツルハHDと親密な関係にある。クスリのアオキHDの17年5月期の売上高は1887億円、営業利益は106億円だった。
ツルハHDの事業子会社ツルハが議決権ベースで5.14%(自己株式控除、17年5月期末時点)を保有。ツルハHDの鶴羽樹会長とクスリのアオキHDの青木桂生会長が、お互いの会社で社外取締役を務める。岡田氏もクスリのアオキHDの社外取締役だ。業界関係者は、「ツルハとクスリのアオキが将来一緒になるのは既定路線」とみている。
さらにその先に、業界トップに立ったツルハHDが近い将来、ウエルシア連合(=イオン連合)に合流するとの見方がある。そうなれば、売上高が1兆5000億円規模の巨大なドラッグストア連合が誕生する。
大手同士の合従連衡が進むなかで、マツモトキヨシHDはどう反撃するのか。ずるずると3位に後退したままでいるとは考えにくい。かつてドラッグストアの代名詞だったマツモトキヨシHDは正念場を迎えている。
(文=編集部)