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美術館の超貴重な展示品、ミスで破損したらどうなる?実は珍しくない?

文=小林倫太郎/A4studio
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 たとえば2015年、某美術品輸送会社の作業員が、国の重要文化財をトラックで輸送中に破損させてしまったという事例が報告されている。車体の揺れは美術品にとって決して好ましくないだろうし、美術品の安全確保を一番おびやかすのは、輸送中の事故ではないだろうか。しかし、貴家氏に見解を求めると、現実的にはもっと違う事情があるようだった。

「美術品の展覧会を行うにあたっては『集荷』『移動』『展示』『返却』という4つの段階を踏むことになります。

 まず美術品の『集荷』では、貸し出す側と借りる側、それぞれの美術館の学芸員と作業員が梱包を担当します。このとき、美術品には常に学芸員による監視の目がついているため、事故が起こる可能性は低いでしょう。これは『返却』の際も同様です。

 次に美術品を『移動』させる際は、その美術品ごとに合った梱包を施したうえで、美術品輸送の専用トラックを使います。専用トラックの特徴は、振動が伝わりにくいサスペンション仕様である、防振材が貼られている、温湿度が一定に保たれている、作品を固定するための装置がある、といったもの。輸送中は学芸員も添乗しますので、ここでもやはり事故が起こる可能性は高くありません。もっとも、業者によっては輸送作業にアルバイトの方が携わっていることもあり、そうなると話は変わってきます。

 最後に『展示』について説明しますと、作業中は基本的に、学芸員が立ち会わなければいけないことになっています。とはいえ、すべての美術品に注意を払うことは難しく、他の工程に比べ、美術品への配慮が手薄になってしまいがちなのが実情です。つまり美術品にとって最も事故が起こりやすいタイミングは、美術品の梱包が解かれている状態かつ、学芸員の目が行き届きにくくなっている『展示』の最中だといえるでしょう。そのため、弊館では、可能な限り多くの学芸員が作業に立ち会ってリスクを最小限にとどめるよう努めています」(同)

事故により損なわれるのは美術品の価値だけではない

 いくら細心の注意を払っていたとしても、人間が取り扱う以上、美術品の破損事故を完全に避けるのは不可能ということか。仮に事故が起こってしまった場合、どのような対応が取られるのかを貴家氏に聞いた。

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