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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

半導体業界、史上最大の買収劇勃発…巨大独占企業誕生で業界激変か

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
半導体業界、史上最大の買収劇勃発…巨大独占企業誕生で業界激変かの画像1サンディエゴにあるクアルコムの本社(「Wikipedia」より/Coolcaesar)

 米半導体のブロードコムが11月6日、米クアルコムに総額1300億ドル(約15兆円)の買収を提案した。もしこの買収が成功すれば、半導体産業史上最大のM&A(合併・買収)となり、世界第3位の巨大半導体企業が誕生する。その上、両社とも通信用半導体のトップ企業であるため、世界の同市場を独占することになる。

まず、アバゴがブロードコムを買収(2015年5月)

 この買収劇の端緒は、米ヒューレット・パッカードの半導体部門が独立したアバゴ・テクノロジーが、2015年5月に旧ブロードコムを370億ドル(約4.6兆円)で買収すると発表したことから始まった(図1)。

半導体業界、史上最大の買収劇勃発…巨大独占企業誕生で業界激変かの画像2

 15年の半導体売上高ランキングでは、「半導体の買収王」と称されるホック・タンCEO率いるアバゴが11位(68.9億ドル)であり、自身より売上規模の大きな9位の旧ブロードコム(84.1億ドル)を370億ドルで買収したのである。

 このような“小が大を飲み込む”買収は業界では前例がない上に、この買収金額は当時では世界最大だった。さらに、アバゴは“ブロードコム”のほうがネームバリューがあると考え、買収した企業の社名“ブロードコム”を名乗るという異例の措置を取った。そして、新生ブロードコムは、世界ランキング6位に躍り出た。

クアルコムがNXPを買収(16年10月)

 一方、クアルコムは16年10月、オランダNXPセミコンダクターズを470億ドル(約4.9兆円)で買収すると発表した。クアルコムはスマートフォン(スマホ)用プロセッサや通信半導体のトップシェア企業であるが、スマホの成長が鈍化していることに危機感を感じていた。そこで、自動運転車用AI(人工知能)半導体で世界を制することを目論んで、車載半導体のトップシェア企業であるNXPの買収に打って出たのである。

 この買収金額470億ドルは、前年のアバゴによるブロードコム買収の370億ドルを上回り、世界最高額を更新した。ただし、この買収は中国と欧州における独占禁止法の審査が終わっておらず、まだ完了していない。

ブロードコムによるクアルコムへの買収提案(17年11月)

 そして今回、新生ブロードコムのホック・タンCEOが、またしても“小が大を飲みこむ”買収を仕掛けてきた。その買収金額は、それまで最大だったクアルコムによるNXP買収の470億ドルの約2.8倍に相当する1300億ドルという、途轍もない金額である。

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