今年17年は、東芝メモリの2兆円の買収をめぐって、日本中が大騒動した(新生ブロードコムも買収に名乗りを上げていた)。しかし、新生ブロードコムの1300億ドル(15兆円)の前では、それも些細な出来事のように霞んで見えるほどだ。まさか、買収金額のギネス記録を競っているわけではあるまいが、それにしても凄まじい買収である。
16年の半導体売上高ランキングでは、ブロードコムが6位(131.5億ドル)、クアルコムが4位(153.5億ドル)、クアルコムが買収しようとしているNXPが10位(91.8億ドル)である(図2)。
もし、これらすべての買収が成功すれば、新々生ブロードコムの半導体売上高は合計で376.8億ドルとなる。すると、台湾TSMC(289.7億ドル)を抜いて、1位インテル(539.7億ドル)、サムスン電子(401.4億ドル)に次ぐ、世界第3位の巨大半導体企業が誕生することになる。
果たして買収は成功するか?
ただし、問題もある。まず、クアルコムがこの買収提案に賛成していない。クアルコムのポール・ジェイコブス会長は11月13日の声明で「クアルコムのモバイル技術でのリーダーシップと将来の成長性をかんがみると、ブロードコムの提案はクアルコムの企業価値を著しく過小評価している」と難色を示している(11月13日付日本経済新聞より)。そのため、ブロードコムは敵対的買収を仕掛けるかもしれないが、成功するかどうかは不明だ。
次に、各国司法省の独占禁止法の審査が通るかどうかという問題がある。ブロードコムは通信インフラ向けの半導体のトップシェア企業であり、スマホ用の通信半導体などのシェアも高い。一方、クアルコムはスマホ向けの通信用半導体とプロセッサでトップシェアを持つ企業である。
したがって、ブロードコムがクアルコムを買収すると、クラウドに使われる通信半導体とスマホ等の半導体をほぼ独占することになる。要するに、IoTやビッグデータ関連の半導体を独占するということだ。それゆえ、必然的に独占禁止法の審査が非常に厳しくなる。場合によっては、「NO」となるかもしれない。
15~16年、M&Aの規模が急拡大
10~14年の5年間における世界半導体業界のM&A総額は、平均で1年当たり125億ドル程度だった。ところが、15年以降、突然M&A総額が急拡大した。15年は1072.8億ドル、16年は996.8億ドルと、過去5年間の平均の8倍規模のM&Aが行われるようになった(図3)。