バズワード化している「オムニチャネル」
ビジネス誌を眺めていると、あらゆるところで「オムニチャネル」という文字を目にする。オムニチャネルのバズワード(定義や意味があいまいな言葉)化が進んでいる。これは「デジタルマーケティング」なども同様で、新たなビジネスタームはその定義があいまいであるため、なんでもかんでもオムニチャネルやデジタルマーケティングと呼ぶことが多い。本稿では、そもそもオムニチャネルとはなんなのか、どうしてオムニチャネルはうまくいかないのかを考えてみたい。
チャネルの進化
そもそも、チャネル(購買の場所)は以下のように4段階で進化、発展してきている。
1.シングルチャネル
2.マルチチャネル
3.クロスチャネル
4.オムニチャネル
古く物々交換から始まり、長い間チャネルはシングルチャネルだった。市場であれ、スーパーであれ、リアル店舗が購買の場所(チャネル)であったのだ。ところが、1995年に米国でAmazonがサービスを開始し、日本でも2000年にサービスが開始された。ここで、ECチャネルという新たなチャネルが誕生する。当初は、カタログ通販のウェブ版のような扱いだったが、ご存じの通り消費者の購買チャネルとしてあっという間に浸透した。次第に、流通小売業や製造業もECチャネルを開設し、リアル店舗とECチャネルの複数のチャネルを持つようになった。
これがマルチチャネルである。日本企業のなかには、複数のチャネルを持てばオムニチャネルだと勘違いしている企業も多いが、これはマルチチャネルの段階にすぎない。
マルチチャネルは複数のチャネルを持つのだが、別々の部門という考え方をすることが多い。私たちはリアル店舗を担当、あなたたちはECチャネルを担当、別部門だよね、と。なので、在庫を共通化するという発想はなく、リアル店舗とECチャネルで在庫を別々に管理する。そうすると、インターネットでバズった商品があり、ECチャネルで売り切れになっても、リアル店舗から在庫を補充するという発想がない。せっかくの販売機会を逃すことになる。この販売機会の逸失を乗り越えようと考えたのが、クロスチャネルの始まりとなった。
日本ではクロスチャネルが先進事例
クロスチャネルとは、マルチチャネルのサプライチェーンを統合し在庫管理を一元化する一方で、ECチャネルで注文した製品をリアル店舗で受け取れるなど、複数のチャネルをまたがった購買が可能になるチャネルのことである。