ECチャネルの雄であるAmazonは、米国でWhole Foodsを買収し、リアル店舗へも着々と進出を進めている。また、レジレスのAmazon Goを展開しようともくろんでいる。Amazon Goはレジレスに注目が集まるが、本質はそこにはない。そうではなく、消費者心理の理解に本質がある。
Amazon Goのレジレスは、日本で主流のRFIDではなく、画像認識で行われる。店舗内に多数のカメラが設置され、画像認識で購買行動を把握するわけだ。入店の際には、駅の改札のようなゲートにスマートフォン(スマホ)をかざして入ることになる。この時、同時に画像認識で、顔とスマホのユーザーIDが統合される。そして、店内で例えばプリンとゼリーを比較し、プリンを購入した場合、このユーザーIDにとってプリンの競合アイテムはゼリーだとわかるのである。
このように、消費者が100万人だろうと1億人だろうと35億人だろうと、それぞれの消費者にとって何と何が競合アイテムなのかということがわかるようになる。しかも画像認識をしているので、その表情から心理まで把握しながら。
一方、ユニクロや青山やZOZOは採寸に力を入れる。体形データから消費者を理解しようとしているのだ。体形を把握すれば、ECチャネルにおいて大きすぎる、または小さすぎるアイテムを除いた検索結果を消費者に表示できる。消費者は体形に合わなかったらどうしようという心配をすることなく、買い物を楽しむことができる。リアル店舗は採寸と試着の場になり、リアル店舗でも購買と決済はタブレットで行うようになる。そうすると、リアル店舗での、検品、在庫管理、レジ打ちなどの作業はなくなり、接客により集中できるようになるだろう。
このように、「ユーザーIDの統合と顧客理解から最適な購買体験を提供する」のがオムニチャネルであり、この定義に従えば、日本でオムニチャネルを実現している企業は、現在のところ存在しない。ユニクロもZOZOもオムニチャネルを目指し、がんばっている最中にある。多くの企業がオムニチャネルがなかなかうまくいかないと困っているが、当たり前だ。まだ、オムニチャネルを実現できている企業は日本に存在しないのだから。
ここでオムニチャネルの意味を再考し、自社がどの段階にあり、何をこれから目指すべきなのか、しっかり考える機会として年末年始を使うのも、良い時間の使い方ではないだろうか。
(文=牧田幸裕/信州大学大学院 経済・社会政策科学研究科 准教授)