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ソフトバンク、高い経営リスクへの警戒広まる…新施策の収益化が困難

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 これまでこの2つの企業は毎年1月に米国で開催される世界的な家電展示会である「CES」に出展してこなかった。しかし、両社とも今年は出展を決めた。その背景には、自社のスマートスピーカーに搭載された人工知能の能力を世界に示し、より多くの賛同企業を獲得しようとする考えがある。このように、企業の経営戦略は、業種を超えたアライアンス(提携)などを結び、協働することを重視している。それは、従来よりもオープンな発想が重視されていることにほかならない。わが国の企業にも、これまでの常識にとらわれるのではなく、柔軟にノウハウや技術を取り込み、新しいモノやサービスを生み出す発想が必要だ。

ハイテク競争で後れを取る日本企業

 
 わが国の経済を見渡すと、アマゾンなどに匹敵する企業は見当たらないのが現実だ。人工知能を搭載した機械が人間と密接にかかわることが増えるなか、わが国の企業は、半導体の製造機器などの分野で存在感を示してはいる。そうした企業の技術力は確かに高い。

 気がかりなのは、常識にとらわれることなく新しい取り組みを進め、必要に応じて政府とも協議を行う行動力のある企業が少ないことだ。それよりも、どちらかといえば過去の延長線上にある発想でビジネスを進めようとする企業が多い。

 国内の企業で特異な存在はソフトバンクだろう。同社は、グループを統率する孫正義氏の眼力によってアニマルスピリットのある企業家を見分け、出資(投資)することで成長を取り込もうとしている。端的に言えば、ソフトバンクは投資会社としての性格を強めている。それを象徴するものが10兆円ファンドと称されるソフトバンク・ビジョン・ファンドだ。

 ソフトバンクが目指しているのは、“シンギュラリティ”の実現だ。シンギュラリティとは、人工知能がわたしたち人間の知性を超越する技術的な特異点を意味する。そのために同社は半導体設計企業である英アーム社を買収し、経営に問題がある米国のライドシェアアプリ大手ウーバーに出資するなど、次から次へとハイテク関連の企業の技術力やノウハウを取り込んでいる。同社は自前でIT技術や通信インフラを開発するよりも、出資や買収を行うことでアマゾンなどをも飲み込む情報通信基盤を形成しようとしているようにさえ見える。

 問題は、市場がソフトバンクの投資戦略のリスクが高すぎると考えていることだ。言い換えれば、アマゾンやグーグルのように着実に新しい取り組みを収益につなげることが難しいと考えられている。その証拠に、ソフトバンクの株価は昨年10月下旬以降、軟調に推移している。

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