メディアで連日のように報じられ、そのたびに話題となる「視聴率」。「好調スタート」「2桁キープ」「大爆死」など、その増減によってさまざまな表現で伝えられるが、最近は「視聴率が高い=人気番組」という図式が成り立たないという。
「視聴率が高いと言われる『プレバト!!』(TBS系)ですが、視聴者の8割は高齢者。たとえば、3月18日放送回の視聴率は世帯12.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、個人7.1%でしたが、キッズ(男女4~12歳)の個人視聴率は2.2%、ティーン(男女13~19歳)は2.0%でした。幼い子どもが見ていないということは、同時にその親世代も見ていないことがわかります」(テレビ局関係者)
では、視聴率で計れない“本当の人気番組”は何なのだろうか?
「F1(20~34歳女性)、F2(35~49歳女性)、M1(20~34歳男性)、M2(35~49歳)に支持される番組です。スポンサー企業にとっては、一度その商品を手にしたら長年愛用する高齢者よりも、目移りしてくれる若年層の方がありがたいのです」(同)
つまり“真の人気番組”は、そうした限定的なターゲットに刺さり、スポンサー受けする番組ということか。では、そんな“リアル人気番組”には、どんな顔ぶれが並んでいるのだろうか。
高視聴率をキープする『有吉ゼミ』
「まず、圧倒的に日本テレビの番組が多いです。たとえば、有吉弘行による冠番組『有吉ゼミ』。もはや、ほぼ大食い番組と化していますが、何も考えず見る分にはいいのでしょう。3月22日の視聴率は世帯13.7%、個人8.1%と民放では断トツです。F1は8.1%、F2は11.3%、F3(女性50代以上)も9.6%と女性層に人気ですが、実は男性層からも人気があります。M1は5.9%、M2は5.3%、M3(男性50代以上)は7.6%。この時間帯でM1、M2が個人5%を超えるのはなかなか珍しいので、人気のほどがうかがえます」 (同)
他には、どんな番組があるのだろうか。
「火曜の『踊る!さんま御殿!!』、それに続く『ザ!世界仰天ニュース』、水曜の『有吉の壁』、木曜の『THE突破ファイル』『ぐるナイ』など、どの曜日の番組もF1、F2を確実に押さえています。また、3月20日の『1億3000万人のSHOWチャンネル』は世帯10.8%、個人7.0%と高めの数字ですが、F2は特に高く、10.4%となっています。夜10時~11時の時間帯は『幸せ!ボンビーガール』や水曜ドラマと不安定なラインナップが並んでいますが、日テレのゴールデンタイムの盤石さはしばらく続きそうです」(同)
高齢視聴者に支えられるテレ朝
視聴率で日テレに次いで民放2位のテレビ朝日はどうなのだろうか。
「この局は、むしろ高齢者でもっています。『池上彰のニュースそうだったのか!!』の3月20日オンエア分は世帯12.9%、個人7.4%と一見好調のように見えますが、番組の性質上、見ているのはほぼ50代以上。M3は11.5%、F3は12.0%とハイアベレージの一方で、他の世代は全滅です。若者世代が熱心に見ているのは『ロンドンハーツ』『アメトーーク!』、さらに3月23日からゴールデンに進出した『家事ヤロウ!!!』くらいです。
いずれにしても、テレ朝は日テレと民放の視聴率争いを繰り広げているとはいえ、正反対の戦いをしているということになる。つまり、現在のテレビ界は日テレの1強体制ということになります」(同)
日テレの本当のライバルはフジテレビ?
では、王者・日テレを脅かすような、真の人気番組を揃えている局はどこなのだろうか?
「フジテレビです。実は、日テレとCXは視聴者層的に似通っているのです。3月18日の『千鳥のクセがスゴいネタGP』は世帯6.2%、個人3.7%と一見低めですが、F1は5.1%、F2も6.7%と、きちんと取っています。
他にも意外な成績を残しているのが、坂上忍による『坂上どうぶつ王国』。3月26日は夜7時からの2時間スペシャルでしたが、日テレが野球、TBSがサッカーということも功を奏したのか、世帯10.1%、個人5.6%と好調でした。さらに、F1も5.3%、F2も6.9%としっかり取れている。
他に、『超逆境クイズバトル!!99人の壁』も若者を中心に幅広い世代に支持されています。さらに『潜在能力テスト』や『今夜はナゾトレ』『世界の何だコレ!?ミステリー』『全力!脱力タイムズ』、その後から始まる『ネタパレ』も、きちんとコアターゲットを取り込んでいます。つまり、日テレの本当のライバルはフジテレビと言えます」(同)
YouTube世代に人気の『水曜日のダウンタウン』
では、TBSはどうか?
「50代以上からは敬遠されるものの、それ以外の層に大人気なのが『水曜日のダウンタウン』です。YouTubeで育った世代にとっては、テレビのスケール感と、YouTubeでもやりそうなトガったドッキリ企画、さらに番組の毒気のある雰囲気が刺さるのでしょう。
ちなみに、3月17日の視聴率は世帯8.4%、個人4.9%。さらに細かく見ると、男性はM1が6.6%、M2が6.3%、そしてM3が3.6%。女性の方も、F1が4.3%、F2が7.4%、F3が5.0%と、テレビの前に一番いるはずの50代以上の数字が低いことがわかります」(同)
『R-1』『相席食堂』低視聴率の裏側
最後に、散々“低視聴率”と叩かれていた『R-1グランプリ2021』(フジテレビ系)と、初のゴールデンタイムで放送された『相席食堂』(テレビ朝日系)について説明しておこう。
「今年の『R-1』の世帯視聴率は過去最低の6.6%、個人も4.1%と汚点を残してしまいましたが、M1は5.0%、M2も5.9%と及第点は取れています。ただ、M3に避けられてしまい、2.5%という結果でした。また、女性層もF1が5.3%、F2が7.0%とコアターゲットには大人気でしたが、こちらもF3が2.9%と50代以上に敬遠されています。
ABCテレビで深夜に放送されている『相席食堂』は、2月2日にゴールデンタイムで全国放送されました。こちらも世帯6.9%、個人4.2%という視聴率に終わり、盛んに“大爆死”と伝えられました。しかし、F1は5.7%、F2も5.4%と、きちんと取っています。もう少し、宣伝期間に時間をかけた方が良かったのでしょう。さらに、この日は奇をてらいすぎたのか、昨年の『M-1グランプリ2020』(テレビ朝日系)のファイナリストが故郷に帰省するという企画でした。初見で見た視聴者は、何がおもしろいのかわからなかったはずです。いつものように肩肘張らず、王道で勝負した方が良かったのかもしれません」(同)
いずれにしても、各テレビ局が世代別の視聴率を重視する流れは今後も加速していきそうだ。
(文=編集部)